(写真はイメージです/PIXTA)

中東・カタールでのFIFAワールドカップが近づいていますが、そのカタールは日本においてエネルギー安全保障上、不可欠な国であることは、意外と知られていません。ニッセイ基礎研究所 小原一隆氏が、日本とカタールの関係について解説します。

6―日本の存在感を示す機会となり得るカタール国家ビジョン2030

さて、カタールは国家ビジョンとして、「カタール国家ビジョン2030」を掲げている(図表5)。2030年までにカタールを先進国へと変貌させ、自国の発展を維持し、国民と将来世代に高い生活水準を提供することを目標としている。以下の4点が柱になる(図表6)。

 

カタールも中長期的には、天然ガスの可採埋蔵量が徐々に減少していくことや、世界の脱炭素の進展に伴う需要減を考え、脱化石燃料依存経済を念頭に、国民生活の変革の必要性を認識しているように推察される。

 

この「カタール国家ビジョン2030」に、日本がどこまで貢献できるかが、今後の日本のカタールからのLNG調達での鍵を握るであろう。こうした中で既に行動を起こしている国もある。2022年9月にドイツのショルツ首相はカタールを訪問し、タミーム首長と会談した*20。LNGの取引*21についても話し合われたが、水素および発電分野、航空、最新技術、重機など他の経済分野での協力を深めることにも言及した模様だ。中国*22や韓国*23も首脳や閣僚がカタールとの経済協力強化を打ち出している。

 

日本も動いている。2013年8月の安倍元首相のカタール訪問で「日本とカタール国との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」が採択され、様々分野で協力が模索されてきた。これを引き継ぐ形で2022年8月には岸田首相*24がタミーム首長と会談を行い、包括的パートナーシップを戦略的レベルに引き上げることや、エネルギー分野における協力関係を一層強化すること、カーボンニュートラルの実現に向け共同取組を進めること、エネルギー分野以外にも、経済、防衛・安全保障、学術交流等を含む分野での協力を推進することを確認した。

 

これらの取組みこそ、カタールとのLNG取引で日本が失ったプレゼンスを再び取り戻す大きなチャンスになり得ると筆者は考える。

 

*20:Gulf Times、2022年9月25日配信、2022年9月26日閲覧。

*21:独ユニパーとRWEがカタールとLNG長期契約の締結間近、Reuters、2022年9月22日配信、2022年9月26日閲覧。

*22:022年2月5日に習近平主席が北京オリンピックで訪中中のタミーム首長と会談。習主席は一帯一路の共同建設や中国企業のカタールへの投資の他、テロ対策分野の協力や人文交流拡大、長期的に安定したエネルギー協力関係を構築したいと述べた(中華人民共和国中日本国大使館ウェブサイト、2022年9月26日閲覧)。

*23 2022年8月17日にカタールのムハンマド副首相兼外相は訪韓し韓国の朴振外交部長長と会談。エネルギー分野での協力を、LNG輸出入だけでなく、LNG運搬船の建造や運搬等への拡大を確認。相互国民の査証(ビザ)の事前取得の免除も取り決めた(Yahoo!ニュース:聯合ニュース2022年8月17日配信、2022年9月26日閲覧)。

*24:岸田首相はカタール訪問を予定していたが、体調不良で電話会談に振替。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年11月8日に公開したレポートを転載したものです。

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