不本意な値下げ提案に応じると人生設計までおかしくなる
しかし、依頼した不動産仲介会社からあがってくる報告は「内見申し込みが来ない」「値下げを要求される」といったネガティブなものばかりです。この段階で売主は焦燥感を抱くようになりました。住み替えですから売却にはタイムリミットがあり、購入希望者が出てくるまで気長に待っている時間はありません。
まだ買い手がつかないのかと痺れを切らしたところ、仲介担当者から値下げの提案を受けました。理由を聞くと、この価格は相場より少し高く、中古物件でリフォームが入っていないのも買い手を遠ざけているかもしれないということでした。さらに個人の購入者ではなく、買取業者に声をかけてみてはどうだろうかと言われたのです。
買取業者とはリフォームして再販売することを事業としている不動産関連会社です。
値下げは不本意ではあるものの、さっさと売って現金化したい気持ちも強く、売主は不動産売却のジレンマに陥りました。迷う売主に対して、仲介担当者は次のような切り口で背中を押しました。
仲介担当者が見せてきた過去の類似物件の取引事例では、確かに売主の売却希望価格よりも安値で売買されていました。結局、売主は実際の相場がそうなら仕方がない、不動産のプロが言うことだし正しいのだろうと自分を納得させ値下げを決めました。値下げをした途端、すぐに買い手が決まり売買取引が成立しました。
無事に売れてよかったと仲介担当者はいいますが、売主としてはもう少し粘れば希望の価格で売れたのではないかと心にしこりを残したまま物件の引き渡しを終えるのでした。
そして不本意な値下げによる売却の先で売主に何が待っているかというと、住み替え先のダウングレードです。希望価格での売却を見越したうえでの住み替え先購入でしたから、予算を見直す必要が出てきました。予算の減少に伴い、間取りや立地面での妥協は避けられません。
悩んだ末、子どもの成長を考えたら家の広さは絶対に変えたくない、と購入エリアの妥協を決めました。勤務地から遠い、駅からもやや距離のある物件を購入したのでした。描いていた理想図とはまったく違った住環境での生活がスタートします。しかもアクセスの悪い場所に越してしまったために、通勤や買い物で何かと不便を感じる生活となってしまいました。
前の家が思っていた金額で売れなかったのだから仕方ないと自分に言い聞かせるのですが、一方でもっと違う結末があったのではないかとも感じ、売却時に焦って値下げを決めたことを後悔する売主なのでした。
あくまで一例ですが、このように売却時に希望した額で売ることが叶わず、その後の人生プランが狂ってしまう売主は決して少なくありません。当初の希望価格で売れたかどうかは神のみぞ知るところではありますが、売主はずっと、こんなはずではなかったという後悔の念を抱きながら暮らしていくことになってしまいます。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長
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