(※写真はイメージです/PIXTA)

物忘れがひどくなり、アルツハイマー型認知症と診断されても、すべての機能がダウンしているわけではないのです。ものを考え、アウトプットすることができます。物忘れするようになったら、工夫が必要です。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

元役員が配食ボランティアをする理由

■週に一回、ボランティアのすすめ

 

哲学者のハンナ・アーレントは著作の『人間の条件』で、人間に必要なものは、「労働」「仕事」「活動」だと言いました。とても難しい論なのですが、ごく簡単に説明します。

 

「労働」は、衣食住を満たすために働くことです。給料をもらい生活費とします。

 

「仕事」は、創造的な作業です。絵を描いたり俳句をつくったり、庭や畑をつくったりします。余暇活動でありますが、人間には不可欠なものです。

 

「活動」は、人との交流です。政治活動、宗教活動、地域活動などはひとりでやるものではなく、他人と協働で行います。

 

現代では「労働」にほとんどの時間が奪われてしまい、奴隷のような人生を送っているのではないか、「仕事」や「活動」がないがしろにされているのではないかとハンナ・アーレントは言います。

 

ハンナ・アーレントが『人間の条件』を書いたのは1958年です。当時は、それから半世紀過ぎてテクノロジーが発達すれば、人間は「労働」から解放され、「仕事」や「活動」に割く時間が増えると夢見た人もいました。

 

しかし、現実には、日本は変わらず長時間労働がますます問題になっています。長時間労働のわりに、賃金も先進国最低レベルで余暇活動もままなりません。

 

「労働」から解放されるのは、年金受給者となってからです。年金額が少ないから働いている方もいますが、壮年期の頃のように働き過ぎにはならないでしょう。

 

70代には時間ができます。これは大きな宝物だと思います。

 

「労働」に割く時間が少なくなった分、「仕事」や「活動」に使える時間が増えるのです。

 

ここでハンナ・アーレントが言う「仕事」は、趣味だと思えば、イメージしやすいでしょう。

 

「活動」は悩むかもしれません。政治にも興味がないし、宗教も信じていない、地域とのつき合いもやってこなかった。どう活動していくかわからない人も多いと思います。

 

私は、週に一回ぐらいボランティアをしてみるとよいのではと思います。

 

ある企業の重役までやった方は、週に一回、配食ボランティアをやっているそうです。社会福祉協議会などで高齢者宅に安価なお弁当を届けていますが、届けながら安否確認をするために会って言葉を交わします。

 

その方は「ボケ防止のためにやっています」と言っていました。会社では偉い顔をしていましたが、ひとりのボケ老人としてボケをかましながら会話をしているのが楽しそうです。

 

ボランティアも有償や無償、いろいろあります。オリンピックのボランティアもありました。障害を持つ方の施設、介護施設、子どもの施設でボランティアをしている方、自治会でゴミ拾いやひとり暮らしの高齢者の支援をしている方等々、やれることはたくさんあります。

 

ある施設を訪問したときに、高齢女性がタオルを畳んでいました。てっきり利用者さんだと思ったら、ボランティアさんとのこと。その方は要支援にもならない元気な方ですが、ひとり暮らしです。でも、何かしたいと週一回ボランティアに来て、お昼ご飯を食べて楽しんで帰るそうです。なかなかいいアイデアだと思いました。

 

動けるうちはこういう「活動」をすることで、「労働」にはなかった人間関係も広がっていき、「ボケ力」も力強くなっていきます。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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