(※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性とその兄は、子ども時代に父親の再婚相手にいじめ抜かれました。そして父親自身も、再婚を後悔するような散々な目に合っています。病床の父親は、男性と兄に「貯金を残すから心配するな」とたびたび口にしていたのですが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

父の再婚相手は「まるで鬼のような人」

今回の相談者は50代会社員の近藤さんです。亡くなった父親の相続の件で、父親の再婚相手ともめているということで、筆者の事務所を訪れました。

 

近藤さんは兄と2人兄弟ですが、中学生の頃、実母が病死してしまいました。その後、父親は後妻と再婚し、後妻と後妻の連れ子2人を迎え入れました。公務員で多忙だった父親は、自分ひとりで息子2人を抱えて生活するのは大変だと考えたようです。

 

ところが、後妻は近藤さんと兄につらく当たるばかりか、父親にまで横暴な態度を取り、我が物顔に振る舞うような性格でした。近藤さんと兄の食事を作らないこともしょっちゅうで、ふたりは親戚や友人の家を避難先とし、順番に泊まり歩いていたそうです。

 

「義母はまるで鬼のような人でした。私と兄をいじめるだけでなく、父にまで暴言や暴力がありましたからね。優しくされたことなんか一度もありません。父だって再婚を心底後悔していたと思います」

 

兄と近藤さんは大学進学時に家を出て、就職してからは実家からも足が遠のきました。後妻との接点はなくなり、父親の生活ぶりも不明でしたが、近藤さんや兄の暮らすアパートへ父親が身一つで避難してくることもあったといいます。父親は離婚こそしませんでしたが、まるで修行のようなつらい毎日を送っていたようだと近藤さんは言います。

 

「父から体調を崩して入院したと連絡が入り、兄と2人で見舞いに行ったのです。そのとき、泣きながら〈義母の自由にならない預金を財産として残す、だから安心するように〉と何度も繰り返していました。公務員を勤め上げた父には退職金がありましたから、恐らくそのことだろうと思いました」

 

その後、近藤さんの父親は入退院を繰り返しながら2年近く療養を続けましたが、残念ながら亡くなってしまいました。

父の真意とは思えない「公正証書遺言」が…

しかし、父親が亡くなったあと、状況は一変します。

 

「〈義母に全財産を相続させる〉という公正証書遺言があったのです。ただ、入院時に聞いていた言葉から、とても父の真意とは思えませんでした。兄と2人で義母に問いただしても〈財産はない、知らない〉の一点張りでした」

 

筆者の事務所の税理士が、まず金融機関に問い合わせるようにアドバイスしたところ、近藤さんは速やかに行動しましたが、後日近藤さんから「預金はほとんど引き出されていました」という連絡がありました。父親の入院期間中のタイミングとのことで、恐らく義母が勝手に行ったのだろうということでした。

 

近藤さんと兄は父親の無念を晴らし、自分たちが納得しない限り相続は終えられないという気持ちでしたが、後妻のほうが一枚上手だったようです。

 

後日、打ち合わせに同席していた弁護士は、預金等の調査をして遺留分侵害額請求をしたらどうかとアドバイスしましたが、近藤さんは「義母の性格は痛いほどわかっています。関わりを持てば、自分たちがストレスを抱えることは目に見えています。もうこれ以上、何もしないようにします」といって、財産を取り戻すのではなく、「ストレスを抱えない」という決断をされました。

 

相続は、被相続人のそばにいる人が有利です。そのためにも、まめに意思疎通を取っておくことが重要です。また、本人の意思とともに、事実確認をしてくことも欠かせないといえます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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