(※写真はイメージです/PIXTA)

男女を問わず産休・育休制度、さらには高齢化時代に対応する介護制度の導入にまで進んでいます。育児に関しては時短勤務だけでなく、当日の休暇申告や自宅勤務など、より弾力的な運用を認める会社も出てきています。男女による昇進・昇格格差の見直しも理想的とは言えませんが着実に進んでいます。ダイバーシティ経営は中小企業といえども避けて通ることができません。中小企業家同友会の取り組みをレポートします。

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過去最高の890余人の女性経営者が集結

■沖縄がリードする、女性経営者の活躍

 

2018年6月21、22日の両日、さいたま市の大宮駅前にある高層ビルで、中小企業家同友会全国協議会(中同協)主催、埼玉中小企業家同友会設営による、「第21回女性経営者全国交流会~彩の国埼玉」が開催された。埼玉同友会の「女性経営者クラブ・ファム」(フランス語で女性の意)は、内閣府の17年度女性のチャレンジ賞特別部門賞を受賞するなど、活発な活動を続け評価されている。

 

牽引役は、埼玉同友会代表理事の一人で、埼玉、千葉両県中心にチェーン展開するメガネマーケット代表取締役の久賀きよえ氏。バブル崩壊直後に脱サラして起業。社員の相次ぐ退社、リーマンショック後の売れ行き不振といった危機を、2000年に入会した同友会での学びを生かして克服、メガネだけではなく補聴器分野にも進出し、「国内でも最高レベルの設備と技術でお客様に提案できる」と自負するチェーンとして、地域で知られる存在にまで育て上げた。

 

開催日当日、JR大宮駅から会場に向かう歩行者デッキは、遠路をものともせず駆け付けたといった感じで、キャリーバッグを引いたり、大きなバッグを手にしたりした、ビジネススーツ姿中心の女性たちで溢れんばかりだった。

 

さいたま市での交流会には、全国43同友会から女性中心に過去最高の890余人が参加したという。「中小企業問題全国研究集会」と並ぶ同友会の重要行事である「中同協定時総会」への参加者が1300余人(18年7月5、6日の宮城県での総会)であることを考えると、女性経営者の全国交流会への関心の高さ、熱意がわかる。企業経営を真摯に学び、成長したいと考える女性同友会会員がこれほど多いのは驚くべきことで、同時に今後の日本経済の活力を考えた場合、歓迎すべきことだ。

 

わが国が人口減少社会に入りつつある中で、女性の社会的進出が着実に進行する一方、今後さらに多くの女性が社会進出すべきだとの考えが急速に浸透してきている。そうした状況下、政府が16年に施行した「女性活躍推進法」(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)などが後押ししての盛り上がりではないかと思われる。

 

この「女性活躍社会」を考える場合、二つの重要な側面がある。一つは様々な分野での女性リーダー、例えば企業であれば経営者・管理職、専門職の育成、登用である。もう一つはあらゆる組織において女性の働きやすい環境、つまり産休・育休が取りやすく、昇進・昇格において男女差別がない職場づくりであり、結果として女性が潜在的に有している能力を発揮できるように制度や風土を改革することで、前者のことが可能になる土台づくりである。ともに日本は世界の趨勢から大きく遅れているわけだが、ともかく同友会の女性活躍社会への取り組みを考える場合も、この両面から見ていく必要があるだろう。

 

まず前者についてだが、全国の同友会の中で女性リーダーの活躍が際立つ組織がある。沖縄同友会で、これは断トツだと言っていいだろう。沖縄同友会の設立は1987年と全国の同友会の中でさほど早いわけではない。しかも各地の同友会では80年代に入ると婦人部の設立が相次ぎ、90年には中同協婦人部(現・女性部)連絡会が設立されている。ただ「婦人部」という呼称には、自立した女性の会というニュアンスがごく希薄だった。

 

そうした流れの中、沖縄の女性経営者たちは89年に他の都道府県と異なり「女性経営者部会」を設立、名称については「碧(あおい)の会」とした。沖縄の青い海と空をイメージさせるとともに、それにより会員の連帯を象徴しているのだという。

 

■子供の貧困、障害者雇用の問題

 

以前、中同協女性部連絡会代表を務めるとともに、長く沖縄同友会代表理事をも務めて、沖縄の女性部会をけん引してきた糸数久美子ITAC社長は、なぜ名称を女性部会としたかについて、「全国交流会に出席したときに、経営に携わっていない経営者夫人がサロン的に参加している様子に強い違和感があったからだ」と説明している。

 

糸数氏ら「碧の会」のメンバーたちは「あくまでも経営を学ぶ女性の集まりにすることを明確にし、経営に参画している人であれば幹部社員でも入会OKだと規約を決めたのです」と語る。以降、積極的に仲間づくりを進めてきたという。

 

こうした沖縄同友会などの女性の自立性を重視する先駆的考えと動きが波及し、93年には中同協婦人部連絡会は女性部連絡会と名称を変えることになり、冒頭で紹介した女性経営者全国交流会もそれまでの全国婦人部交流会から名称を変更することになったのである。

 

沖縄同友会の「碧の会」が先進的であるのは、それだけではない。前述の糸数氏は2003年から10年連続で沖縄同友会代表理事を務め、08年から3年間は比嘉ゑみ子氏とで、代表理事3人中2人を女性が占めていた。その後15年から3年間、新城恵子氏(アイリスエステサロン会長)がやはり代表理事を務めている。初期の十余年間を除いて、沖縄同友会の場合、女性代表理事が不在の年度はほとんどない。

 

「こうしたケースは他の同友会ではまず見られない」と糸数氏は強調する。それどころか、全国の代表理事を務める女性経営者を眺めてみても、10人に満たない。女性部会は次々と各同友会に誕生してはいるが、いまだにない同友会が7つもある。

 

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※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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