(※写真はイメージです/PIXTA)

「現在の精神医療には課題がある」と医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏は語ります。41歳男性・会社員のAさんを例に、現実に多くの精神科クリニックで行われている診察・治療を見ていきましょう。

コロナ禍の影響か?うつ病で出勤できなくなった男性

41歳男性、会社員(仮名:Aさん)

 

主訴:朝起きられない、出勤できない

生活歴:有名大学卒業後、大手企業に新卒入社。半年前に課長に昇進したばかり。

妻、長男(7歳)、長女(5歳)との4人暮らし

 

Aさんは、コロナ禍の影響のなか、職場で前例のない対応を求められ、業務量が増加する日々が続きました。すると次第に、集中力や食欲、体重の低下、そして全身の倦怠感を覚えるようになりました。2ヵ月ほど、なんとかこの状態でやり過ごしてきましたが、ある日の朝、起きられなくなり、ついに出勤できなくなりました。

 

熱があるわけでも、どこかに痛みがあるわけでもないのですが、何かしようと思っても何もする気が起きません。朝は気分の落ち込みがひどくて起きられず、昼前にようやく起きても、外出はおろか入浴もおっくうで、結局、テレビをぼーっと見ているだけの毎日が続いていました。この状況にAさんの両親がうつ病を疑い、Aさんに受診をするよう強く促しました。

 

この経過を診察で聞いた医師はAさんをうつ病であると判断し、自宅療養を要する旨を記載した診断書を発行しました。抗うつ薬を処方し、2週間後に再度受診に来るようAさんに指示しました。「しばらくは朝起きるのがつらい日が続くかもしれませんが、なるべく生活リズムを維持するようにしてください。調子の良いときには適度な運動をするといいですよ」とアドバイスしました。

 

その後は、2週間に一度の間隔で診察を受けましたが、症状はなかなか改善しません。

 

ただAさんは、子どもの頃から好きだったテレビゲームをやっているときだけは、さまざまな不安を忘れることができ、いくぶん気分が軽くなるのです。とはいえ、大の大人が仕事を休んで療養中だというのに、ゲームばかりやっているのも気が引けるという状況でした。

 

Aさんは薬の量や飲み続けることについて不安を感じていましたが、医師は処方している薬に副作用が出ていないかを中心に確認し、抗うつ薬を増量したり、別の薬を追加したりなどして、症状を改善させるための工夫をしました。診察はいつも、前回からの症状の変化や処方した薬の副作用の確認が中心で、所要時間は5~6分です。

次ページ「抗うつ薬」「臨床心理士から生活指導」の効果は…

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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