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日本の後継者不足を解決すべく考案された事業承継税制は、後継者の納税資金不足を解決するありがたい特例です。しかし、この特例を受けるために満たすべき要件や、長期間の書類提出といった留意すべき点がいくつかあります。事業承継税制の活用に必要な諸項目についてみていきましょう。

事業承継税制を受けるための手続きと注意点

事業承継の適用手続きは以下のとおりです。

 

①承継予定の後継者や承継時までの経営見通しなどを記載した「特例承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関(税理士など)の所見を記載のうえ、都道府県知事に提出し確認を受ける。

 

②贈与または相続後、一定の期限までに、会社の要件、先代経営者の要件、後継者の要件を満たしていることについての都道府県知事の認定を受ける。(①の確認は贈与または相続の前に行うのが原則ですが、2023年3月31日※までに贈与または相続が発生した場合、贈与または相続の発生後に、申請書と同時に特例承継計画を作成・提出することも可能です)

※2021年4月時点。2021年12月10日に発表された『令和4年度税制改正大綱』では提出期限を1年延長すると明記されている。

 

③認定書の写しとともに、贈与税または相続税の申告書および担保等を税務署へ提出する。

 

④贈与税または相続税の申告期限から、5年間が「事業継続期間」となる。その期間中、後継者は事業を続け、株式保有を続けなければならない。また、納税猶予を受け続けるには、事業継続期間中は毎年、都道府県に対して「年次報告書」を、税務署に対しては「継続届出書」(同期間終了後は3年ごとに)提出しなければならない。

 

特に注意すべきは、事業承継後5年間は毎年、その後も、猶予を続けている期間中は3年に1度、長期間にわたる書類提出が義務付けられる点です。もしうっかり忘れてしまうと、猶予が取り消されて、まとめて納税をしなければなりません。

 

また、事業承継後5年間は、以下の理由が発生したときも、納税猶予が取り消されます。

 

・後継者が代表者でなくなった場合(病気で働けなくなったなどのやむを得ない場合を除く)

 

・一族の議決権が50%以下になった場合、または、後継者が筆頭株主でなくなった場合

 

・株式を売却(M&A)した場合

 

・事業をやめた場合

 

これらの理由に該当して納税猶予が取り消された場合は、利子税が加算された額をすぐに納税しなければならず、かえって損になることもあります。さらに、5年を経過後も、M&Aや会社の解散をした場合は、猶予された税の納税が必要になります。

 

こういった、取消措置が定められているため、事業承継税制の利用を検討する際は、後継者が長期間事業を継続していく見通しが求められます。

 

少なくとも承継後5年間の「事業継続期間」中の事業継続は必須だと考えてください。さらに、将来、猶予された税金が免除されるためには、自分の次の後継者に会社を引き継いでもらうことが原則です。

 

 

税理士法人 チェスター

 

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