ヘッジファンドに関心はあるけれども、情報が少なく、二の足を踏んでいる人も多いでしょう。本連載では、ヘッジファンドマネージャーから直接話を聞き、その実態を明らかにします。前回に続いて話を伺うのは、国内ヘッジファンドの先駆けである株式会社GCIアセット・マネジメントの山内英貴氏。2020年のコロナ禍でも約20%のリターンをあげた運用戦略とは?

得意分野を活かしてもらい、運用は各チームに任せる

株式会社GCIアセット・マネジメントの山内英貴代表取締役CEO
株式会社GCIアセット・マネジメントの山内英貴代表取締役CEO

 

――ヘッジファンドマネージャーはあまり表に出てくることはなく、何をしているのか知りたい方もいると思います。山内社長は、普段どのような感じで仕事をされているのでしょうか?

 

今はコロナ禍で昨年2月中旬から社員全員リモートワークに切り替えており、週1回、メンバーとはWEB会議でコミュニケーションを取っています。海外の拠点とも、何かあったら節目節目でコミュニケーションを取るといった感じです。

 

運用戦略ごとに運用責任者がいて、運用は基本的にチームに任せているので、私が日常的に指示するといったことはありません。

 

運用責任者に権限と責任を委ねて、得意分野を活かしながら自由な裁量で取り組んでもらっています。何でもそうですが、「自主性」がないと、「ポジティブ・サプライズ」は生まれないと考えています。

相場が大きく動くと利益が出る「ガンマ・ロング戦略」

――運用は各チームに任せているとのことですが、運用戦略の基本、「投資哲学」を教えてください。

 

自社運用戦略の中核は、人間の判断(定性判断)を排除したシステマティックなモデル運用です。かといって、HFT(高頻度取引)のようにアルゴリズムを組んで秒単位でトレードしているわけではなく、売買回数は月に1回程度です。材料などに反応しながら頻繁にトレードすると、取引コストもかかってしまいます。特にレンジ相場でこれをやってしまうと上手くいきません。

 

運用哲学は「ガンマ・ロング」です。コール・オプションとプット・オプションを両方買い持ちしているようなポートフォリオを構築しています。わかりやすく言うと、市場が上下どちらかに大きく動いてボラティリティ(価格変動率)が高くなったときに、大きなリターンが出る戦略です。

 

極端な例を使ってイメージを説明すると、1年のうち11ヵ月は月マイナス1%の運用成績でも構いませんが、残りの1ヵ月で大幅なリターンをあげて、年間ではプラスにしていく考えです。できれば、1年間で「1勝11引分け」を理想としていますが。逆に、1年のうち11ヵ月がコンスタントにプラス1%でも、どこか1ヵ月でマイナス20%とか大幅なドローダウン(損失)だとしたら、年間でマイナスになってしまいます。

 

ちなみに、弊社のお客様は9割が機関投資家なので、ニーズに応じて戦略をカスタマイズしながら、複数の戦略を走らせています。

 

 

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インタビュアー/冨中 則文(幻冬舎アセットマネジメント)

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