「ソ連からコロナに効果がある血清を取り寄せる」
数十年前、その頃お世話になっていた会社のご厚意で、中国の介護現場の視察に行ったことはある。たしか、視察の最終日に、釣魚台国賓館で行われていた自民党の二階派のパーティみたいのに参加をしたのは事実だ。
しかし、パーティの主催者が二階幹事長だっただけで、一緒にご飯を食べたわけではないのだが。じーじの頭の中では「俺の娘は、中国のちょんぎょどん(釣魚台国賓館)で、二階堂(二階幹事長)と飯を食った。だから知り合いである」になっているらしい。
「中国のちょんぎょどん(釣魚台国賓館)に行けるってだけですごいんだぞ」
いつものことだが話は、どんどんあらぬ方向へ向かい、「釣魚台国賓館に入れたことはとてつもなく凄いことで、自分も一度は行きたかった」と何度も言うじーじ。満州生まれのじーじにとっては憧れの場所なのかもしれない。
そういえば、釣魚台国賓館で買ってきてあげたお土産を今も大切にしているし、認知症になる前、誰かが家に来るとそのお土産を自慢げに見せていたことを思い出した。しかし、数十年も前の話である。認知症は、短期記憶はなくなるが、長期記憶はあるというのは本当だと実感しながら、このまま、「二階幹事長に電話しろ」の話しを忘れてくれればいいなあと思っていたら……。
「中国のちょんぎょどん(釣魚台国賓館)で二階堂(二階幹事長)と飯を食ったんだからな、お前は、選ばれたすごいやつなんだ」
げ! 忘れてなかった!!
そりゃあ、なん百人もいる社員の中から中国の介護現場の視察に行けた一人だが、選ばれた理由は勤続年数が長かったからで、私がすごかったわけではない。
「いいから、早く二階堂(二階幹事長)に電話をしろ!」
とますますヒートアップの様相。
「知り合いなんだから、電話して私が総理になります! って言えばいいじゃないか」
「私、総理なんかになりたくないからいいよ」と言うと
「お前のように弁の立つやつが、今の日本には必要なんだ」
「お前が総理になったら、俺は総理の父だ」
そりゃそうだ。
「そして、お前が総理になったら、ソ連から、コロナに効果があるらしい、血清を取り寄せてやるから」
コロナに効く血清があるとは初耳である。吹き出しそうになったのを堪えながら、
「残念だけどさあ、二階堂(二階幹事長)さんの電話番号知らないよ」と言うと。
一瞬、オヤ? という表情をしたものの
「俺が、お前を首相にしてやる。二階堂(二階幹事長)に推薦状書いてやるから、レター用紙(便箋らしい)を持ってこい!」
相変わらず、話が壮大なじーじなのである。
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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