創業が2009年と、まだ歴史が浅いにもかかわらず、企業価値がゼネラル・モーターズを超えたと言われるほどに急成長しているタクシー配車アプリ「Uber(ウーバー)」。一つのスマートフォン・アプリが、わずかな間にタクシー業界の仕組みを大きく変えてしまいました。タクシーと異なる分野で次世代の「○○版Uber」を狙う、スリランカのスタートアップ企業について、前編・後編でお伝えします。

リソースの少なさを武器に強大な既存勢力に立ち向かう

Uberは単純なモバイル・アプリでもって、世界中のタクシー業界を変えてしまった。Uberによって誰もがタクシードライバーになることができ、ユーザーは圧倒的な利便性と透明性に惹きつけられた。もはやタクシーを捕まえるために、道路に立ったり電話を何度もしたりする必要はなく、アプリを操作するだけでタクシーが迎えに来てくれるのである。

 

Uberに代表される「オンデマンド型」ビジネスモデルの成功によって、タクシー以外の分野での「○○版Uber」を開発するスタートアップ企業が相次いで登場した。すぐにサービスを手に入れたい消費者とサービスの提供者を、モバイル・アプリで結び付ける仕組みを、他の分野でも狙っているのだ。

 

これらのスタートアップ企業が狙う分野は、食品や日用品のデリバリーから、雑用や犬の散歩まで幅広くある。これこそ典型的なO2O(Online to Offline)ビジネスであり、モバイル・コマースの成熟によって、可能になったビジネス・モデルである。

 

Uberの事例は、モバイル・アプリを開発する小さなスタートアップ企業が、巨大で歴史ある業界を破壊し、勝利することができるということを示した。この勝因の一つには、少ないリソースで運営できるビジネス・モデルがある。Uberは車両を所有せず、タクシー・ドライバーはそれぞれ独立しており従業員ではない。このビジネス・モデルがもつ強みに自信を得て、「○○版Uber」を開発するスタートアップ企業は、Uberのような成功を夢見ている。

オンデマンド型サービスが抱える構造的な課題

Uberのビジネス・モデルは他の産業でも成り立つのだろうか。オンデマンド型のサービスを提供する多くのスタートアップ企業が失敗している事実を考えると、なかなか厳しいだろう。ユニット・エコノミクスの不健全性、労働者の質や確保の問題、波がある需要など、このビジネス・モデル特有の欠点が成功を阻む。

 

例えば、オンデマンド型ビジネスの寵児とされたExec社は、忙しい人と雑用をする人を結び付けるスタートアップ企業だったが、収益性を上げるための方針転換に失敗した後、結局ハウスクリーニングを手掛ける企業に売却された。Exec社が受け取るサービス費のうち、80%がスタッフの収入となり、残り20%がExecの取り分であったが、20%では運営費と顧客獲得コストをまかなうには不十分だった。結局、ユニット・エコノミクスを改善するために、サービス費を大幅に値上げせざるをえなかった。

 

また、サービスの依頼の多くが、動けるスタッフが少ない週末に集中してしまうことも問題だった。Uberのように需要が増えたら割増料金を課すシステムを持たなかった、すぐに需要が供給を上回ってしまった。加えて、オンデマンド型サービスのスタートアップ企業が提供する短期間の一時的な仕事に集まるスタッフの大部分は、モチベーションが低く信頼性に欠ける傾向があり、仕事の放棄や質の悪さにも悩まされてしまったのだ。

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    この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年5月に掲載した記事「UBER FOR X」を、翻訳・編集したものです。

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