日々発表される統計情報を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、47都道府県の所得金額を比較して、地方の「稼ぐ力」の推移をみていきます。

コロナ・ショックで給与、前年比割れが続く

新型コロナウイルス感染拡大のよって、私たちの所得にもじわりじわりと影響を与えています。雇用、給与及び労働時間について毎月の変動を明らかにする、厚生労働省「毎月勤労統計調査」をみてみると、2020年、1~3月の現金給与総額は前年比プラスで推移していましたが、緊急事態宣言の出された4月には前年比マイナスに落ち込みました(図表1)。6月は速報値ですが、3ヵ月連続のマイナスを記録し、さらに深刻さを増すと考えられます。

 

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
[図表1]2020年「現金給与総額」の推移 出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」

 

特に影響が大きかったのが、所定の労働時間を超える労働に対して支給される給与や、休日労働、深夜労働に対して支給される「所定外給与」。緊急事態宣言下では休業となる企業も多く、また、緊急事態宣言が解除されてからも、企業の業績悪化に伴って従業員の労働時間は短縮傾向にあり、所定の給与プラスαは望めない状況が続いています。

 

また2020年夏季賞与は、軒並み前年を下回り、リーマンショック以来の大幅減と大きく報道されました。2020年下期の企業の経営環境は、ますます厳しくなるというのが大方の見方なので、冬季賞与も期待できません。そうすると、夏冬の賞与、期末手当等の一時金を含む「特別に支払われた給与」の落ち込みは、相当なものになるでしょう。

「都市」と「地方」で、1人当たりの稼ぐ力は2倍以上

新型コロナの影響がどれくらいのものになるのか、またどれくらい続くのか、渦中の現在は推測の域をでませんが、では、過去をさかのぼってみてみると、私たちの給与はどのように推移してきたのでしょうか。紐解いていきます。

 

国税庁が公表している「統計年報」から、所得税納税者を対象とした所得金額を都道府県別にみていきます(図表2)。所得金額総計が最も多かったのは「東京」、続いて「神奈川」「愛知」「大阪」「埼玉」「千葉」と続きます。当然、総計なので、所得税納税者の人数、すなわち、人口比とほぼ比例します。

 

出所:国税庁「統計年報」
[図表2]2018年所得金額総計、上位10自治体 出所:国税庁「統計年報」

 

一部逆転現象が起きているのが、「大阪」と「愛知」。2015年の国勢調査によると、大阪の総人口は8,839,469人に対して、愛知は7,483,128人。生産労働人口(15~64歳)に絞っても、大阪5,341,654人に対して、愛知は4,618,657人。大阪は愛知の約1.2倍の人口ですが、所得納税者は大阪390,082人に対して、愛知405,416人と、「1.5万人ほど大阪のほうが少ない=所得税の納付者が少ない」という結果になっています。

 

なぜ大阪では、という議論はまた別の機会に譲るとして、次に「所得税納税者1人当たりの所得金額」をみていくことにします(図表3)

 

出所:国税庁「統計年報」より作成
[図表3]所得税納税者1人当たりの所得金額、上位10自治体 出所:国税庁「統計年報」より作成

 

「東京」が圧倒的に多く、1,044万円。次に「神奈川」729万円、「京都」718万円、「愛知」716万円、「兵庫」709万円と続いていきます。東京を中心とした首都圏と、大阪を中心とした関西圏など、大都市を含む都道府県が上位を占めます。

 

一方、下位は規模の大きな都市の少ない、東北や山陰の自治体が並びます。一都三県の所得税納税者1人当たりの所得金額は835万円。下位の自治体とは2倍以上の差が生じています。都市と地方、稼ぐ力の差が如実に現れた結果だといえるでしょう。

次ページ20年で1人当たりの所得が増えたのは、わずか6自治体

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