本記事は、山田知広税理士の著書『オーナー社長のスゴい引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社長は子どもの頃から「理科の実験」が大好きだった

廃業予定だった会社が高値で売れた事例を紹介しましょう。

 

2015年の話です。名古屋にあるCという会社は特殊な塗料の開発をしたり、塗装加工をするメーカーです。施設は、開発用のラボが併設された事務所と、塗装加工をするための作業場を持っています。従業員は当時、十数名いました。

 

社長はすでに77歳になっていましたが意気軒昂で、仕事を生きがいにしているような人でした。子どもの頃から理科の実験が大好きだったそうで、いつも暇さえあればラボに籠り、薬品を調合して新しい塗料や溶剤の開発をし、塗料の伸びや発色、落ちにくさの実験を行っていました。

 

仕事を生きがいにしているような社長だったが? (画像)PIXTA
仕事を生きがいにしているような社長だったが?
(画像)PIXTA

 

この会社は私の父の代から顧問税理士をさせていただいており、社長や奥様とは長い付き合いがあります。ご家族は奥様の他に息子さんと娘さんが1人ずつおられました。お子さんはお2人ともそれぞれ独立し、家を離れて東京近郊で生活しています。以前、社長にも息子さんにも確認したことがあるのですが、息子さんがC社を継ぐことはないとのことでした。

 

奥様は社長が高齢であることを気にかけておられ、「もし社長に何かあったら、この会社はどうなりますか」という質問を時々、私にされていました。後継者がおらず、事業承継の準備もしていないので、このままいけば廃業が濃厚でした。

 

私は私で随分前から折を見ては、「社長、そろそろ事業承継をお考えになりませんか」「ご家族も心配なさっていますよ」「もし社長が会社を続けられなくなったら、従業員もみんな困りますよ」などと声をかけていたのですが、どうも今ひとつピンとこないようで、いつも生返事しか返ってきませんでした。

 

そんなある日、社長から私に電話がかかってきました。普段は決算の担当者にしか電話をかけてこない社長が、直接私宛に電話をかけてきたのです。「そろそろ前に言っていたM&Aを進めていきたいと思ってね」。

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オーナー社長のスゴい引退術

オーナー社長のスゴい引退術

山田 知広

幻冬舎

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