「コロナ滞納」が問題化するなど、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大によって深刻なダメージを受けている賃貸市場。「払えない…」という言葉を前に、オーナーはどのような態度で臨むべきでしょうか。本記事では、国内外の不動産や海外進出のコンサルティング事業を手掛ける株式会社国際不動産エージェントの取締役・鈴木学氏が、実際の事例をもとにわかりやすく解説していきます。

調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
5/19(日)>>>WEBセミナー

「コロナの影響で賃料払えない」オーストラリアの事情

「海外の物件で減額請求を受けたらどうする?」シリーズ。今回はオーストラリア編になります。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が全世界で猛威をふるう昨今ですが、オーストラリアは、初動の早さや厳しい外出規制が功を奏し、現時点では被害を比較的軽く抑えることに成功しています。

 

とはいえ、「資源価格の下落」「国際観光のストップ」「中国との外交関係の悪化」など、さまざまな要因が絡み合い、経済的に大きな影響を受けていることも事実です。たくさんの人が職を失い、あるいは一時帰休させられ、家賃の支払いに支障が出ています。

 

同国最大の都市シドニーでは、3月20日からロックダウンが始まりました。外出禁止令によって人々が不自由な暮らしを強いられていたなか、4月9日、筆者の友人より相談がありました。保有している都心コンドミニアムの管理会社から「向こう3ヵ月間家賃を20%だけ減額してほしい、と入居者がリクエストしている」との連絡を受けたといいます。

 

結構良い家賃で賃貸しているとはいえ、オーナーにはローンの支払いも残っています。そこで、筆者が入れ知恵するかたちで管理会社を巻き込み、いくつかの選択肢を検討してみました。

 

① 家賃補償保険に加入する

 

② 入居者と条件交渉する(減額縮小 or 減額期間縮小 or 減額でなく猶予にする)

 

結論からいうと、①はダメでした。問い合わせた保険会社からの回答は、「20%減額した家賃をベースに計算し、それ以上の減額が発生すれば補償する」という内容だったので、オーナーは受け入れられませんでした。

 

②も検討しましたが、管理会社より、「入居者が失職証明書を出してくるので、20%減額は受け入れたほうが賢明です。その代わり、4ヵ月目には本来の家賃に戻しますから」という提案があったため、オーナーはその条件を呑みました。結果、入居者と合意書を結び、5月から20%減額した家賃を振り込んでもらっています。

 

世界各国の滞納対策事情
世界各国の滞納対策事情

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部
 

 

「オーナー天国」のオーストラリア賃貸市場に変化が…

同国北部のクイーンズランド州では、新型コロナ影響下にあった4月下旬、おそらくオーストラリアで最も賃借人寄りな法案(Renter Protection Package)が審議されていました。その内容は、「オーナー天国」と呼ばれる同国の文化慣習からすると、驚くような内容でした。

 

たとえば、「賃借人が半永久的に家賃減額を請求できる権利」「賃貸契約の内容に関わらず、賃借人が1週間の事前通告で一方的に解約・退去できる権利」等々…。

 

しかし、そこは家主の権利の強いオーストラリア。不動産業界と組んで、「家賃減額請求の根拠となる条件(失職証明書等)を定め、減額の下限(25%等)や拒否権を設ける条項」「賃借人が一方的に解約・退去できる条項の削除」などを求めて機動力のある動きを展開、結局、同法案の成立を阻止しました※1

 

5月に入り、オーストラリア各州は経済再開に向けて動き出していますが、賃貸市場における新型コロナの影響は、エリアによって差があります。シドニー、メルボルンをはじめとした大都市の都心部では、空室率が3倍になったエリアも出ており、家賃減額請求が当分続きそうです※2。逆に、近郊の住宅地に行くと賃貸市場も底堅い印象です。

 

 

※1 https://mobile.abc.net.au/news/2020-04-17/coronavirus-queensland-renters-forced-prove-why-cant-pay-rent/12159102?pfmredir=sm&fbclid=IwAR0l-pit4bQDJRTO1HOmrg3P0-M5dpZtO385KC4ERSB1SL2w_Ph93iYJjd4  

 

※2 https://www.theage.com.au/national/victoria/inner-city-rental-vacancy-rate-nearly-triples-amid-covid-19-student-exodus-20200523-p54vri.html

 

 

鈴木 学

株式会社国際不動産エージェント

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部
 

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録