「法人」で不動産賃貸業を行うメリットとは?

前回は、所有している賃貸用建物を新たに設立した法人に売却する際の注意点などを説明しました。今回は、これまでの連載を振り返り、個人所有の賃貸用建物を「法人所有」に切り替えるメリットを改めて見ていきます。

役員が複数人いれば、その分「所得の分散」ができる

これまでの連載で、法人で不動産賃貸業を行うメリットをいくつか紹介しましたが、今回はそれらをまとめて具体的に解説します。

 

最大のメリットは所得の分散です。個人に代わって法人が不動産賃貸業を行うため、家賃は法人に入ってきます。法人は、入ってきた家賃を役員報酬(給与)という形で役員に支払います。役員が複数人いるのであれば、その分、所得の分散ができるわけです。また、法人から個人が役員報酬を受け取ると、役員報酬は法人にとって経費となるので、課税対象ではなくなります。

 

たとえば個人で賃貸不動産の経営を行う場合、家賃収入と必要経費の差額が所得となります。もし家賃収入が年間2000万円、経費が1000万円なら、差し引き不動産所得は1000万円です。そこに所得税が課税されます。

 

法人の場合も基本的な所得計算は同じですが、法人が支払う給与は経費ですので、個人の場合の不動産所得1000万円を役員報酬として支払えば、結果として法人の所得は0円となり、法人税は課税されません。

 

さらに、役員報酬に対しては給与所得控除が設けられています。給与所得が100万円なら65%の65万円、1000万円なら22%の220万円と所得により変動しますが、これらを相続人の数で合計すると控除額も増えていくので、節税効果が高くなります。

法人所有に切り替えることで経費で落とせる幅が広がる

これで終わりではありません。ほかにも、見逃せない大きな節税メリットがあります。それは、生命保険の活用の幅が広がることです。相続税対策において生命保険は広く活用されていますが、法人化でも同じです。

 

個人で生命保険に加入する場合は、契約者と被保険者が夫、死亡保険受取人が妻というように、すべて個人として契約しなければなりません。また、控除できる生命保険料は上限が12万円(一般・介護・年金)と限られています。

 

一方、法人で生命保険に加入すると、契約者が法人、被保険者が社長、死亡保険受取人が法人という契約形態を選択することができます。このように契約すると、保険料を経費、すなわち損金として計算することができるのです。保険の種類によって全額損金、2分の1損金、4分の1損金などが選択できます。控除額に税法上の限度額はありません。

 

つまり、賃貸用建物を法人所有に切り替えることで、経費で落とせる幅がぐっと広がるのです。

 

たとえば個人で車を持っていた場合、車にかかるお金を不動産賃貸業の経費とするのは難しいですが、法人であれば、通常、車の1台くらいは許容されますので経費にしやすくなります。それと同様のことが、生命保険においても可能となるのです。

 

生命保険をかけて、途中で解約した場合、法人は解約返戻金を受け取ります。解約返戻金自体は法人の収入となりますが、これを原資に建物の修繕費や退職金を支払えば課税を避けることができます。あらかじめ建物修繕のタイミングや役員退職の時期などを想定し、計画的に生命保険に加入することで、将来の資金繰りを楽にすることができるのです。

 

被保険者が亡くなったときに支払われた保険金は、死亡退職金として相続人に分配することができます。この場合は、相続財産となるので、相続税の非課税枠が使えます。

 

たとえば法人に1000万円の保険金が支払われた場合、そのお金には法人税がかかります。しかし、これを死亡退職金として支払ってしまえばすべて経費となり、法人税はかかりません(ただし、不相当に高額な部分は経費とはなりません)。また、死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるので、その分だけ節税ができます。受け取ったお金を相続税の納税資金にすることも、もちろん可能です。

 

以上のように、法人に切り替えることで所得の分散ができ、生命保険を活用して資金繰りを図るなど節税メリットは個人と比較にならないほど大きくなるのです。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載大増税時代に大損しない「不動産を活用した相続税対策」

北村税理士事務所 代表
税理士(東京税理士会麻布支部所属)
TKC全国会資産税対策研究会 会員 

1971年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学卒業後は東京都港区の藤浪会計事務所に所属、資産税を中心としたコンサルティング業務に従事。六本木ヒルズや白金プラチナタワーなどの再開発案件にも携わる。2005年より早稲田大学大学院会計研究科にて租税法の大家である品川芳宣教授に師事。2007年、北村税理士事務所を開設。現在は相続税対策・申告や、顧問税理士業務を中心に行う。

著者紹介

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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