自分を取り巻く親類縁者との関係が明確になることから、相続について考える富裕層を中心に「家系図」への注目が高まっています。きっかけがなければ難しい作業であるかもしれませんが、やり方次第では、江戸時代の先祖まで遡ることも可能なのです。本記事では、家系図作成代行センター株式会社代表の渡辺宗貴氏が、家系図作成の前に知っておくべき「戸籍」事情を解説します。今回は、戸籍ができる以前の先祖を遡る方法について説明していきます。

郷土資料に残された、様々な先祖の手がかり

戸籍制度ができる前の家系調査、すなわち「戸籍以上の調査」において、家によって調査方針や難易度は様々です。しかし数千家系の戸籍を見て調査方針を立ててきた結果、各家によって調査の方針は大きく変わるものの、大まかに下記の6パターンに分かれることがわかりました。

 

1.寺や墓がわからなくなっているので、同姓からアンケートを取る必要がある

2.菩提寺に過去帳の有無を確認する必要がある

3.地元の旧家なので、地元の郷土資料や人名録の調査が必要

4.江戸時代武士の家系なので藩政資料の調査が必要

5.全国的に少ない苗字なので、全県、あるいは全国へのアンケート調査が必要

6.その他、上記に当てはまらないケース

 

たいていの家系は上記の2~3つに該当します。それでは、実際に調査を行ったらどういうことがわかるか、具体的に見ていきましょう。

 

まず、郷土資料で手がかりが見つかった/見つからなかった事例です。筆者の母方、葛西家の場合、 先祖は青森県板柳村に住んでいました。この地域の郷土誌を見てみると「葛西家は板柳村の代表的な家であったが残念ながら記録は残っていない」と読み取れる記載がありました。記録が残っていないという事実がわかったことも、その後の方針が立てるので、立派な調査結果です(やっぱり残念ですが……)。

 

筆者の母方・葛西家の先祖が住んでいた青森県板柳村の郷土資料から見つけた一文
筆者の母方・葛西家の先祖が住んでいた青森県板柳村の郷土資料から見つけた一文

 

一方、筆者の妻、玉置家の場合、先祖が住んでいたのは和歌山県白浜町で、 郷土誌を見ると、「副戸長 玉置又平」と先祖の名前の記載がありました。今後の調査に非常に有益な手掛かりです。

 

筆者の妻、玉置家の先祖が住んでいた和歌山県白浜町の郷土資料で見つけた一節
筆者の妻、玉置家の先祖が住んでいた和歌山県白浜町の郷土資料で見つけた一節

 

その他、これまでお客様の家系調査の一環で郷土資料を調べた結果、

 

・漁業関係の網元であることが判明

・有名な農家で米の品評会で表彰歴もあることが判明(表彰状の画像あり)

・有力な家の記録に「小作○○」と記載あり

※地主から土地を借りて耕作し、農作物の一部を小作料として地主に提供していた農民

・江戸期に村を切り開いた人物と同姓であることが判明。現在の同姓の数などより、本家筋であることがほぼ確定

 

など、色々なことがわ判明してきました。このように、先祖が住んでいた地域の文献や文書に先祖の足跡を発見する可能性は、意外と高いのです。

同姓の家に手紙でヒアリング調査

同姓のへのアンケート調査で手がかりを見つけた事例を見ていきましょう。筆者の母方葛西家は「東北から来たらしい」という聞き伝えだけしか残っておらず、家紋も寺も墓もまったくわからない状態でした。まずは「戸籍調査」で江戸時代に青森県の農村地に住んでいたことがわかりました。 その地域を電話帳で調べると数十件の葛西姓の方がいましたので、

 

「北海道に渡った際に家系についてわからなくなってしまいました。ウチの家系をご存知でしたらお教えいただけますでしょうか?」

 

と、すべて葛西家に手紙を出してみました。 その結果、90歳を超えた地元の同姓の方がウチの家系を知っていてくれて、親切に返事をくれました。その結果、

 

・家紋(三つ柏)

・菩提寺(青森県弘前市)

・墓(本家の墓と並ぶ)

・聞き伝え(戸籍上は青森から北海道に渡っているが地元では幼少の時に亡くなったと伝えられている)

 

など、様々なことがわかりました。同姓へのアンケート調査では、先祖の住んだ地でしか聞けないような、先祖の由来やルーツを聞くことができる場合も多いのです。

 

筆者の母方の先祖が住んでいた地域の同姓の方から届いた手紙。先祖に関することが色々と書かれたいた
筆者の母方の先祖が住んでいた地域の同姓の方から届いた手紙。先祖に関することが色々と書かれたいた

やってみなければわからない「戸籍以上の調査」

「戸籍以上の調査」は、「戸籍調査」のように、国の公的資料である程度の成果がほぼ保証されているわけではないので、いろんなケースが考えられます。郷土誌に載っているかどうかも、調べてみないとわかりません。同姓の方にアンケートを送った場合、どの程度協力いただけるかも、やってみないとわかりません。墓や過去帳が現存するかも調べてみないとわからないのです。これまでやってきた戸籍以上の調査のなかでも、うまく先祖を遡れたケースでは、

 

●本家や寺に過去帳があり400年前(江戸時代初期)まで判明

 

●地元に当家の江戸時代以前の具体的なルーツの伝承(源平藤橘、藤原氏のいずれであるなど)が残されていて、1000年以上前まで判明

 

などがありました。決して多くはないですが、こういうこともあります。まったく何もわからないとういうことは少ないですが、情報がないことはありえます。菩提寺や本家は確定できたが、過去帳や墓は消失して無くなっている、というケースもありえます。先祖の記録が焼失しているのはとても残念ですが、そのような場合でもただ残念がるのではなく、「ずっと気になっているよりも、無いことがわかってよかったかもしれない」と、成果がないことも一つの成果と受け止める覚悟が必要です。

 

一方で心配なのが、戸籍に保管期限があったように「戸籍以上の調査」も時間との勝負、という一面があります。この機会にやれることはすべてやってみる、と思ったのであれば、なるべく早く動きましょう。特に、先祖の寺や墓が分からなくなっている場合は、手遅れにならないうちにアンケート調査だけでも行っておくといいでしょう。前出の筆者の母方の調査にしても、あのときアンケート調査を行ったから、先祖の寺や墓が判明したのです。

 

 

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