2019年に入ってもなお、ベトナム不動産市況は踊り場が続いていますが、その主な理由として、外国人の名義借りによる不動産取得を警戒する、ベトナム政府の動きがあげられます。政府指導のもと、コンドミニアムの開発・販売に関する許認可が厳しくなるなど、これまでと大きく様相が異なってきており、外国人投資家は注意が必要です。今回は、2019年上半期のベトナム・ホーチミンの最新不動産市況、ベトナム政府の動きについて解説します。

国会でも、外国人の名義借りによる不動産取得を問題視

2018年11月に掲載した『2018年下半期ベトナム・ホーチミンの最新不動産市況』でも詳述しましたが、2019年に入ってもまだベトナムの不動産市況は踊り場が続いています。大きな理由として、政府の政策的な動きがあげられます。

 

昨年から政府指導のもと、コンドミニアムの開発・販売に関する許認可が厳しくなっており、一昨年までは許容されていた、不動産開発を進めながら政府の許認可を追加していくというやり方(本来は、許認可を取ってから開発しなければならない)が、厳しく制限されています。今のところ、対象がコンドミニアムのみであることから、外国(とくに中国)からの過度な投資を制限しながら、不動産価格の急激な上昇を避ける狙いがあるといわれています。

 

規制がかかっているのはホーチミンだけではなく、ベトナム全体であり、建築途中で止まっている物件や、予約のみで販売が実現できていない物件も増えています。

 

5月のベトナムの国会では、2018年までの都市部での土地の運用・管理・計画に関する報告が行われました。出席した委員は、外国人による名義借りによる不動産取得(ベトナム人名義で購入)の問題について協議し、国として早急な対応を求める議案が上がりました。

 

委員からは、ほかにも以下のようなテーマが重要な議案として取り上げられました。

 

 1.土地使用目的の明確化と変更に関して

 2.開発社(投資者)の土地使用権の割り当てに関して

 3.土地の非効率な使用に関して

 4.外国人による名義借りでの不動産購入に関して

 

とくに外国人による名義借りによる不動産購入に関しては、国防や治安維持に支障を及ぼしかねないと心配する意見が多くあり、事態を把握するための調査の必要性や、外国人による名義借りでの不動産購入を規制する法整備の必要性が強調されました。

登記簿が下りていない外国人向けの物件には注意を

この意見を踏まえて、チン・ディン・ズン副首相は外国人が土地を購入する際に名義貸しの役割をになうベトナム人や、外国人による不動産購入を厳しく監視する予定だと表明しました。

 

ホーチミン市不動産協会のLe Hoang Chau会長は、中国人や韓国人投資家の間でホーチミンの不動産に対する需要が高まっていると述べ、双方の投資家たちが高価格の土地や不動産購入においてもベトナム人に名義借りを依頼していることが最大の問題だとしています。

 

この問題は、リゾート地である中部のダナンや、ニャチャンでも起こっています。沿岸部の土地や不動産の購入が増加し、本来外国人が購入できない地元のホテルやショップハウスも、名義借りで購入した外国人が運営しているケースが増えています。

 

そのため、現在の不動産市況としてはベトナム全土において、外国人購入者に関する規制やベトナム人からの名義借り問題の強化も含め、市場に供給される物件が制限されているといった状況です。

 

ただし、ベトナム経済が依然好調であることには変わりなく、逆に市場では供給が不足しており、販売許可が下りた物件や転売物件も価格が上昇しています。とくにベトナム人は土地建物購入の方向に向かっており、コンドミニアムよりも戸建てや土地に目が向いている状況です。

 

このまま規制を強めて全体的に市場を下げていくのか、それとも販売許可が降りた希少価値物件や転売物件がプレミアとして上がっていくのかは、この先を見極めて行かないと何とも判断できません。

 

この状況下で、6月22日にVINCITYの一次代理店を集めての売出発表があるとの案内が来ました。VINCITYも、一昨年から何度も販売を行うとPRしながら、規制の影響もあり頓挫してきましたが、実際にこのタイミングで、規制の厳しい超大型開発の許可が下りて販売が行われれば、改めてVINGROUPの力が実証されることになるでしょう。また、興味深いのは販売価格です。代理店からの情報では1500$/㎡~との情報もあり、この売出価格が本当なら、現時点では率先してお勧めできない物件になります。

 

大型開発であるがゆえに完成まで7年も要する物件で、また、立地を見てもすぐに人々が移り住む状況ではなく、都市鉄道も含めたインフラ整備をにらみながらの購入判断になることが予想されます。短期ではなく、10年単位の長期スパンでの投資が望まれる物件だと筆者は思います。

 

ご参考までに、昨年末に掲載した記事、『ホーチミンの大規模開発プロジェクト「VINCITY」の投資価値』をご覧ください。VINCITYの見立てを掲載しています。見立ては現在も変わりませんが、販売価格が上がった場合はじっくり様子を見ながらの対応になります。

 

最後に、少し気になる点をあげておきます。ホーチミン中心地近郊では、前回の記事『ルール変更も頻発…「慎重さ」が不可欠なベトナム不動産投資』でも少し触れたように、「外国人に投資開放していない地域」の調査が行われています。現在売出し予定の1区バソン駅近くの外資開発物件は、外国人向けには50年のサブリース販売になる見込みです。まだ正式に発表されていないため、ここでは物件名を控えますが、今後の販売物件や現在、まだPink book(登記簿)が下りていない外国人向け物件は注意が必要になります。サブリースになった場合対処も含め、これから少しずつ準備しておく必要があります。

 

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