相続税の税務調査には、「強制調査」と「任意調査」があります。このうち、ごく一般的な税務調査は、納税者が自ら正しい申告を行っているかどうかを確認する目的で行う任意調査となります。相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠が「任意調査」について解説します。

調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
5/19(日)>>>WEBセミナー

実地調査における3つの種類

任意調査には、「実地(隣宅)調査」と「反面調査」という二種類の調査があります。

 

実地調査とは、調査対象者に対して直接調査することで、反面調査とは、調査対象者の取引先等に対して実施される税務調査です。

 

さらに実地調査は、大きく「聴取調査」「現況調査」「現地調査」の3つに分けられます。

 

それぞれ調査の内容やポイントが異なりますので、あらかじめ、その概要や相違点について確認しておきましょう。

 

(1)聴取調査

 

「聴取調査」とは、提出された申告書に基づいて一通りの確認をし、あらかじめ税務署側で抽出しておいた問題点について聴き取りを行う調査のことです。
聴取調査を受ける際のポイントは次の通りです。

 

①「身分証明書」と「質問検査章」を確認する

 

税務調査の調査官は、調査の際、「身分証明書」を提示することが義務付けられています。

 

税務調査を装った詐欺事件に巻き込まれないためにも、身分証明書の提示を求めて確認を行いましょう。

 

また調査官は、同時に「質問検査章」を提示することになっています。この質問検査章には調査する税目が記載されていますので、あくまで相続税の調査であることを、あらかじめ確認しましょう。

 

②聞かれたことだけを正確に話す

 

被相続人の所有していた預貯金や不動産等の財産(相続財産)について、家族がすべて知っているというケースは稀です。まして、預貯金が積み上がるまでの過程や、不動産取得の経緯などについて、過去に遡って正確に把握していることは、まずありません。

 

ところが、調査官の質問は、そういった範囲にまで及ぶことがあります。

 

「ここに500万円の出金がありますが、これは何に使ったものですか」

 

「この土地はいつ頃いくら位で手に入れたものですか」

 

そのような質問に対しては、正確に知っているのなら、そのまま話すべきでしょう。

 

しかし、「……かもしれない」「……だったのでしょう」などと、推測交じりの曖昧な答え方は、かえって調査を混乱させるだけで、さらに、他の相続人や関係のない第三者にまで迷惑を及ぼすことになりかねません。

 

知らないことや、わからないことは、はっきりと「わかりません」「調べて、後日連絡します」などと返答するのが賢明です。

 

③家族の財産についても調査が及ぶ

 

聴取調査では、家族(相続人)名義の資産ついて質問される場合があります。

 

家族(相続人)名義の資産が、実質的には被相続人の財産だったと推測される場合、その点についても質問が及んできます。この場合にも、曖昧な受け答えはせず、事実関係を確認した上で答えるようにしましょう。

 

(2)現況調査

 

「現況調査」とは、実際の現場を確認しながらその現況をもとに行われる調査です。
現況調査では、聴取調査のために資料や書類を漏れなく用意し、万全の準備を整えたとしても、調査は調査官との面接・やり取りだけで終わるものではありません。

 

ほとんどの場合、

 

「この預金通帳はどこに保管してありましたか」

「保管してあった金庫を見せてもらえますか」

 

などといって、家の中のあちらこちらを見て回ることもあります。

 

調査官自身が金庫の中身を取り出したり、タンスの引き出しを開けたりすることはできませんが、「金庫の中の書類等を全部出してくれますか?」と言われれば、対応しなければなりません。

 

調査官が、この現況調査で視線の先に捉えているものを列挙すると、次のようになります。

 

① 自宅金庫や貸金庫

 

相続税の税務調査では、お金に関連する箇所が調査されます。

 

たとえば自宅にある金庫や銀行の貸金庫などは、必ず調べられると考えていいでしょう。それらの場所に申告していない現金や貴金属類などがあった場合、その所有者や入手経路などを詳細にわたって訊かれることとなります。

 

② 書類の保管場所

 

事前に用意した書類等に関連して、「この書類を保管していた場所を見せて下さい」と言われるケースはよくあります。調査官としては、他に申告していない預金や不動産がないか把握するために、被相続人名義のものだけでなく、家族名義の預貯金等も実質的には被相続人のものではないかと疑いをもって探していきます。

 

このような場合、寝室やタンスなど、あまり他人には見せたくない場所については、「ここには他の書類はありません。もし見つけたら、後で連絡します」などといって、調査には協力するという姿勢を見せながらも、そこは調査とは無関係の場所であることを主張しましょう。

 

③家の内外の様子

 

現況調査では、家族が住んでいる家の内外も調査対象となります。
例えば、外側からは門構えや家の造り、車庫、庭の様子など、内側からは調度品や絵画、骨とう品などがチェックされます。その他、部屋に掲げているカレンダーが申告書にない金融機関のものであった場合、質問されることがあるので注意しておきましょう。

 

(3)現地調査

 

「現地調査」とは、相続税の申告書に記載された不動産等について、現地に赴き、実物を確認する調査です。実際に現地を見て、利用状況や権利関係を確認し、正しい評価がなされているかどうかをチェックします。

税務署の調査を甘くみないこと

相続税の税務調査のうち、実地調査における3つの種類について、それぞれの概要をご理解いただけましたでしょうか。実地調査に備えて、ぜひ「聴取調査」「現況調査」「現地調査」の違いを把握しておきましょう。

 

税務署では、相続税の申告書の提出を受けて、申告漏れ等の有無を精査し、実地調査に入るか否かを検討するわけですが、初めから申告書が提出されていない相続案件についても、市区町村からの連絡によって相続発生(死亡)の事実は把握しています。

 

そして無申告の相続事案についても、過去の確定申告の内容や税務署内部の各種資料、市区町村からの不動産情報などをもとに内部調査を行い、必要と認められる場合には、税務調査を行うことがあります。税務署を甘くみない方が良いでしょう。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

 

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本記事は、『税理士法人レガート』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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