米国名門大学では「エンダウメント」と呼ばれる基金を運用し、大学経営を行っています。2018年度の全米エンダウメントの寄付金総額は5兆円を超え、今後も増額が期待されます。本記事では、株式会社GCIアセット・マネジメント、投資信託事業グループの執行役員である太田創氏が、学生1人当たりの純資産総額12.1億円を記録したロックフェラー大学を例に、米国エンダウメントの実態を見ていきます。

全米最大のエンダウメントはハーバード大学だが…

全米エンダウメントのなかで最大の資産を運用しているのは、ハーバード大学です。そこで「全米No.1」の大学もやはりハーバード大学かと思いきや、実はそうではないのです。もちろん、No.1の切り口は純資産総額ではありませんが。

 

全米大学実務者協会(NACUBO)が発表している、最新のエンダウメント関連レポートから、2018年度の運用成績やランキングを見ていきましょう。

 

[図表1]エンダウメントの投資対象別リターン

(出所:NACUBO/U.S. Educational Endowments Report 8.2 Percent Return in FY18)
(出典:NACUBO/U.S. Educational Endowments Report 8.2 Percent Return in FY18)

 

 

2018年度のエンダウメント全体の平均リターンは+8.2%で、2017年度の+12.2%から4ポイント悪化しました。この要因は、主として米国株及び外国株式のパフォーマンス悪化によるところがほとんどです。

 

エンダウメントが重要視する過去10年平均リターンは、2018年度は昨年度よりも1.2ポイント改善し+5.8%となったものの、ターゲットリターンの+7.2%よりも劣後しています。

 

一方、オルタナティブ投資全体は、昨年度よりもパフォーマンスは0.5ポイント改善し、+8.3%となりました。若干ではありますが、伝統的資産のパフォーマンスが劣後した分、オルタナティブ投資部分がパフォーマンスの底上げに貢献しています。

学生1人当たりの運用資産額はロックフェラー大学が1位

4兆円以上の資産を運用するハーバード大学が、全米最大のエンダウメントであることは冒頭でも述べましたが、学生1人当たりの運用資産額を見ると、違う景色が見て取れます。

 

[図表2]学生1人当たりの純資産総額

(出所:NACUBO/2018 Endowment Market Values)
(出典:NACUBO/2018 Endowment Market Values)

 

上記図表2からも明らかですが、学生1人当たりの純資産総額では、ニューヨークのロックフェラー大学が12.1億円と、2位のプリストン大学の3.5億円を大きく引き離し、断トツの1番になっています。エンダウメントの規模は2400億円程度で、アイビーリーグの10分の1くらいの規模でしかありませんが、学生数が極端に少ないため、その分学生1人当たりでは全米トップに立ったわけです。

 

ロックフェラー大学は医学系の大学院大学で、かつての石油王ロックフェラー氏が1901年に設立した「ロックフェラー医学研究センター」を前身としています。ちなみに、日本の野口英世は、1904年よりロックフェラー医学研究所で研究に従事していました。基金の規模は決して大きくはありませんが、学生1人当たりの資産規模は、他大学とは比較にならないほどです。

 

 

興味深いことに、同大学はウェブサイトを通じて新たな運用戦略の募集も行っています。いわく、「当大学に運用戦略を提案されたい方は、こちらのサイト(http://www.rockefeller.edu/investments/webform)からコンタクトしてください。その際、頂いた資料に基づいて判断し、次回のステップをご案内いたします。回答には4~6週間頂戴しておりますが、あらかじめご了承ください」とのことです。

 

我こそは!という運用腕自慢のみなさん、一度「全米No.1」のロックフェラー大学の門を叩いてはいかがでしょう?

 

 

太田 創

株式会社GCIアセット・マネジメント

エクゼクティブ・マネジャー(投資信託ビジネス担当)

 

 

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