今回は、節税策を見直して、赤字から黒字に転換した会社の事例を見ていきます。※本連載では、税理士・さいたま新都心税理士法人代表社員 松波竜太氏の著書『その節税が会社を殺す』(すばる舎)から一部を抜粋し、健全な資金繰りで会社の手元資金を厚くする方法を解説します。

赤字なのに多額の役員報酬を受け取る理由とは?

数年前に、とある会社から相談を受けました。その会社は、「数年赤字が続いており、銀行からの融資も厳しく、このまま会社を続けられるかどうか・・・」という状況でした。

 

製造業で、年商が1億7000万円弱、税引後利益がマイナス約1200万円の赤字でした。会社は赤字なので法人税は払っていません。手元資金も月商の1カ月分ほどしかないので、消費税の予定納税や賞与の月には資金が不足し、そのたびに銀行に融資を申し込んでいる状態でした。

 

私が決算書をチェックしてみて、驚きました。役員報酬を3800万円も払っているではないですか。さらに、法人税を払っていないのに節税用の保険にも加入していました。

 

「どうして赤字なのにこんなに役員報酬を取っているのですか?」

 

と質問したところ、

 

「利益を会社に貯めても税金に取られるだけなので、一度個人に支払って、個人から会社が借りる形を取った方が良いと税理士から指導を受けました」

 

という回答でした。

 

いったい、どれだけ無駄な所得税を支払っていたことでしょう。まさに「その節税が会社を殺す」状態です。

 

しかし、こういう状態であれば、赤字を脱するのは簡単です。

 

まずは役員報酬を減額してもらいました。

 

具体的には、実質的に中心となっていて後継者候補であった専務の報酬はそのままにし、社長とその奥様の給与を半分以下にしていただきました。

 

会社が生きるか死ぬかのときです。社長には「会社を殺すつもりなら、そのままの報酬を受け取ってください」と話し、納得してもらいました。

 

また、生命保険も解約。その他にも会社の資産で金になるものは全部売るなど、打てる手はすべて打ちました。

黒字化に成功したうえに手元資金は約5倍に!

その結果、翌期には黒字に転換。

 

黒字になったので銀行は話を聞いてくれるようになります。そこから銀行と交渉しながら返済と融資のバランスを整えて、2年ほどかけて手元資金を増やしました。

 

現在では・・・

 

●利益が出るので、銀行融資が下りる

●投資したいときに融資が下りるので、最新の設備を導入できる

●最新設備の導入によって、同業他社との差別化が図れる

●その結果、売上が上がり、さらに機械に任せて生産性アップ、人件費も抑えることができる

●そしてより多くの利益を獲得できる

 

という、良いことづくしの好循環の中で順調に会社を大きくされています。

 

また、手元資金は当初の月商1カ月分から大きく増え、4.9カ月分となっています。

 

借入こそ5000万円ほど増えて、1億2000万円となっていますが、年間の利息支払い額は、逆に当初の360万円から270万円と減っています。借入額は増えていても、利率を下げられて利息は減っているのです。

 

その分、法人税を90万円ほど払っていますが、融資を受けるための「金融費用」の一部と見るならば、合わせて360万円ですから、当初の支払利息額と同額となります。

 

同じ利息を支払いながら、一方は手元資金月商1カ月弱、もう一方は月商5カ月弱。どちらが余裕を持った経営ができるかは明白です。

 

また、「必要なときに銀行に融資をお願いする」立場から、銀行に「融資させてもらえませんか?」と、お願いされる立場に変わっています。

 

従業員への還元にも積極的になり「頑張れば報われる」と従業員のモチベーションも高く、豊富な資金を元に、経営は非常に順調です。

 

潤沢な手元資金と資金繰りの安定は、経営者の心の安定につながり、心の安定が正しい経営判断につながるのです。

 

これ以降で、そこにたどり着くための具体的な方法を説明していきたいと思います。

 

お金に強い社長の裏ルール

無駄な節税をやめることで、会社は飛躍する!

その節税が会社を殺す お金に強い社長がコッソリやってる節税&資金繰りの裏ルール31

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松波 竜太

すばる舎

その節税、実は「会社を殺す節税」です! 300社以上の中小企業をサポートしてきた著者が、会社を強くする節税・銀行の言いなりにならない交渉術を大公開! 誰も教えてくれないけど知ってると一生トクして安心・安全な税金と…

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