今回は、小さな会社が「青色申告」を選択するべき4つの理由を見ていきます。※本連載は、冨田健太郎税理士と葛西安寿税理士の共著、『小さな会社が本当に使える節税の本』(自由国民社)から一部を抜粋し、資本金1億円以下、従業員数50人以下の小さな会社を経営する社長のための、合理的でリスクの少ない節税法を紹介します。

青色申告には「4つの特典」がある

法人の確定申告の種類には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。白色申告にはメリットがないため、ほとんどの法人が、税務上圧倒的に有利な青色申告の承認を受けています。

 

では、青色申告にはどのような特典があるのでしょうか。代表的な特典として、次のものがあります。

 

①欠損金の繰越控除
②特別償却・割増償却
③税額控除控除
④推計課税がされない
 

欠損金の繰越控除は、法人がある期に赤字を出した場合に、その金額を翌期以降10年にわたって黒字から控除できるしくみです。

 

たとえば、中小法人等が前期に税務上200万円の赤字を出し、当期の利益が100万円だったとします。本来であれば、当期の利益100万円が課税の対象となるところですが、前期の欠損金200万円のうち100万円をぶつけることができるため、当期の課税所得はゼロとなり、法人税を納税する必要がなくなります。残りの欠損金100万円は、さらに翌期へ繰り越すことができます。

 

なお、資本金1億円超など一定の法人の場合、欠損金の控除額は、当期の税務上の利益の50%が限度となります。今回のケースの場合、当期は50万円が課税の対象となり、残りの欠損金150万円は翌期に繰り越すことになります。

 

特別償却・割増償却は、一定の資産などを購入した場合に、より多くの減価償却費を計上できる特典で、税額控除は、固定資産や人件費などについて一定の支出があった場合に、税額を直接控除できる特典です。

 

これら2つの特典は、制度の新設や廃止、計算方法などの変更が頻繁に行われるため、適用を受けられる制度がないか、毎期情報を収集するとよいでしょう。

 

推計課税とは、同業他社との比較などによって、税務署が帳簿に基づかずに独自に税金を計算して課税する方法ですが、青色申告法人に行うことはできません。青色申告法人の場合、税務署は法人が作成した帳簿の調査に基づいて更正などの判断を行います。

申請書を所轄税務署に提出するだけで青色申告にできる

青色申告をするためには、事前に申請書を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。設立初年度の場合には設立後3カ月以内、または設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を所轄税務署長に提出すれば、初年度から青色申告法人となります。

 

設立第2期以降の場合は、適用を受けようとする事業年度開始日の前日までに申請書を提出する必要があります。申請書提出後、税務署から何も連絡がなければ、自動的に承認があったことになります。

 

青色申告の承認を受けると、法定の帳簿記録と保存をしなければなりませんが、この点は白色申告とほとんど変わりません。青色申告になることによる手間やデメリットは特にないので、青色申告をしていないのであれば、早めに承認を受けておくとよいでしょう。

 

 

冨田 健太郎

税理士

 


葛西 安寿

税理士

 

本連載は、2018年6月15日刊行の書籍『小さな会社が本当に使える節税の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

小さな会社が本当に使える節税の本

小さな会社が本当に使える節税の本

冨田 健太郎,葛西 安寿

自由国民社

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