中国関連資本の撤退などにより、減速感が目立つアメリカの戸建て住宅市況ですが、サンフランシスコ・ベイエリアではまた違った様相を見せているようです。今回は、シリコンバレーの住宅価格を動かす巨大IT企業3社の時価総額、収益状況なども解説します。

住宅市場も「米中貿易摩擦」の影響は避けられず

前回は、インダストリー不動産について簡単に説明しました。今回は、シリコンバレーの戸建て住宅市況について見ていきましょう。

 

スタンフォード大学お膝元の街・パロアルトはシリコンバレーの中心地です。ちょうど2年前に掲載した連載第20回(関連リンク『「シリコンバレー(戸建)住宅」の最近の価格動向』参照)にて、パロアルトの戸建て住宅市況を紹介しましたが、現在はどのようになっているのでしょうか?

 

パロアルトの戸建て住宅売買中間価格は、以下のように推移しています。

 

(単位:万米ドル)

2016年06月:240

2016年12月:250

2017年03月:223

2017年06月:271

2017年09月:260

2017年12月:270

2018年03月:267

2018年06月:318

2018年09月:290

出所:Trulia社

 

2017年春までは軟調に推移しましたが、それ以降は2018年7月まで大幅な価格上昇が続きました。ところが、ここ数カ月は価格の調整局面入りしています。

 

ここ数カ月の価格調整は、以下のような要因が考えられます。

 

①2018年前半の価格急上昇(+約20%)の反動

 

②フェイスブックの情報漏洩問題、テスラのイーロン・マスク会長兼CEOの株価操作問題等を原因として、一部のシリコンバレーIT企業群の株価調整が進行した

 

③ 米中貿易摩擦による中国関連資本の米国からの撤退

 

実際のところ、先月25日に発表されたS&Pコアロジック・ケースシラー住宅指数<2018年7月分>では、価格上昇に若干の減速感が見られます。中でも、米国大都市圏である10都市の減速感が目を引きます。おそらく、中国人の投資比率が高いからでしょう。これにより、リーマン危機前のピークを越えられない状況が続きそうです。

 

出所:セントルイス連銀
[図表1]S&Pコアロジック・ケースシラー住宅10都市指数推移  出所:セントルイス連銀

 

季節調整後で指数が前月比マイナスとなった都市は、ボストン、シカゴ、ダラス、ニューヨークの4都市です。その前の月では、シカゴ、デトロイト、ニューヨークとなっていましたので、シカゴ、ニューヨークには注意しておいたほうが良いでしょう。

まだ強さを見せるSFベイエリアの共同住宅市場

それでは、サンフランシスコ・ベイエリアの共同住宅市場はどうなっているでしょうか?

 

まずは賃貸市場から見ていきましょう。下記は、カリフォルニア州の主要都市における許認可数(供給増加の可能性)と、過去数年の家賃変動との関係を表したグラフです。

 

出所:Zillow社
[図表2]カリフォルニア州における主要都市の許認可数(供給増加の可能性)と、過去数年の家賃変動との関係  出所:Zillow社

 

サンフランシスコ・ベイエリアのほとんどの都市で、ここ数年、家賃が5〜15%程度下落しています。他州と比較すると許認可数は相対的に少ないとはいえ、家賃下落に影響を与えていることが分かります。

 

しかしながら、共同住宅の売買市場ではまた違う様相が見えます。

 

ロスネスグループ社(シリコンバレー所在)の調査レポートによると、サンタクララ郡およびサンマティオ郡の2018年前半期の共同住宅の価格は、昨年度に続いて上昇しています。サンタクララ郡で約25%、サンマティオ郡で約10%上昇しました。

 

一方、売買単価はサンタクララ郡で約33%、サンマティオ郡で横ばいであることが確認されています。戸建て市場に比べると、共同住宅市場はまだまだ強いことが分かります。

巨大IT企業3社が安泰である限り、住宅価格は続伸

シリコンバレーに所在する巨大IT企業3社(グーグル社、アップル社、フェイスブック社)の最近の時価総額・企業収益はどうなっているでしょうか?

 

2018年第3四半期決算は今月末から来月初めにかけて決算発表がありますが、2017年末から時価総額は+11%、企業収益<2018年第2四半期までの年換算EBITDA>は+16%、パロアルトの住宅価格上昇率は+7%、ケースシラ―サンフランシスコ地区指数上昇率は+4%に伸びています。

 

企業収益が上昇する限り、シリコンバレー巨大IT企業の時価総額、住宅価格を押し上げる要因に確実になっていることが分かります。現状は、

 

IT企業収益>時価総額(株価)>パロアルト住宅価格>サンフランシスコ住宅価格

 

という上昇率間の相関関係になっていると言えます。

 

(本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。また、本記事は不動産事業に関する情報提供のみを目的とするものであって特定のファンドへの投資の勧誘を意図するものではありません)

 

 

小川 謙治

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

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