今回は、個人事業の法人化を検討する際に確認すべき4つの項目について解説します。※本連載では、「不動産オーナーを支援する税理士の会」の著書で、株式会社エッサム編集協力、渡邊浩滋総合事務所代表の渡邊浩滋税理士・司法書士が監修した『賃貸経営でお金を残す! 不動産オーナーの儲かる節税』(あさ出版)から一部を抜粋し、賃貸経営の「法人化」により、節税メリットを得る方法を紹介します。

「売却金額と帳簿価額」のバランスが取れているか?

節税の面から考えると、個人事業の法人化は大いにメリットがありますが、一方でコストや注意点もあります。これらは、法人化へのハードルとも言えるモノです。ハードルを越えられるかどうか、しっかり確認したうえで法人化を検討しましょう。

 

①売却金額より借入残高のほうが低い

 

まず最初のハードルは、不動産購入時やリフォーム時などに個人で借り入れた残高が売却金額を下回っているかどうかです。

 

法人化する際、個人が法人に物件を売却することもあります。この際、個人の借入金額が残っている場合、法人で不動産購入資金の融資を新たに受ける必要があるわけです。

 

個人は、法人に売却して得たお金で、借入金の返済を行います。借入残高が売却金額を上回っていると、返済ができなくなってしまいますから、売却金より借入残高が下回っていなければなりません。

 

個人と法人での売買金額は時価で行わなければならないため、勝手に決めることはできません。借入残高と物件の時価を確認して、どちらが多いかを確認しましょう。

 

②売却金額と帳簿価額のバランスが取れている

 

賃貸用不動産物件を購入すると、その建物代金は毎年、減価償却で経費を計上していきます(本書『賃貸経営でお金を残す!不動産オーナーの儲かる節税』51ページ参照)。

 

一方、物件の帳簿価額(簿価)は減っていきます。

 

帳簿価額とは、経理で帳簿に記録した物件の未償却残高のことです。減価償却費を計上した分、帳簿上での未償却残高が下がっていくわけです。

 

法人化に伴って物件を法人に売却する際、この帳簿価額を売却価額が上回ると、個人に譲渡利益が発生することになります。そのため、個人に譲渡税が課税されます。

 

たとえば帳簿価額6000万円、借入残高7000万円の物件を、法人に8000万円で売却する場合、差額の2000万円(8000万円−6000万円)に対して譲渡税が課税されます。

 

譲渡所得の税率は物件の所有期間が譲渡する年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで変わります。

 

所有期間が長期(5年超)の場合

譲渡所得2000万円税率20・315%=406万3000円

 

所有期間が短期(5年以下)

譲渡所得2000万円税率39・63%=792万6000円

 

なお、この計算は取得費や譲渡費用は考慮しておりません。また、法人化の際に現物出資で不動産の名義を移転した場合も、税法上は譲渡と同様に扱われますので譲渡税が発生します。

法人化による節税額と名義移転の費用を比較する

③借入金を一括返済する際に違約金が発生することがある

 

法人に不動産を売却して得たお金で借入金を一括返済した場合、違約金がかかるケースがあります。固定金利で借り入れていた場合などに多い契約ですので、金融機関と交わした契約書(金銭消費貸借契約書)をよく確認するようにしましょう。

 

条件等は金融機関によって異なりますが、多額の違約金がかかる場合には法人への売却がむずかしくなってしまいます。

 

④不動産の名義の移転費用がかかる

 

不動産を法人に売却して名義を書き換える場合には、登記費用や不動産取得税がかかります。合計すると予想以上の高額になることもありますから、法人化による節税額と名義移転の費用を比べて、どれくらいで回収できるかを計算し、法人化を検討しなければいけません。

 

また、名義の移転手続きを司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も発生します。

 

[図表] 名義の移転コスト

 

 

渡邊 浩滋

税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表 

税理士 司法書士 宅地建物取引士

賃貸経営でお金を残す!  不動産オーナーの儲かる節税

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渡邊 浩滋,粟野 淳一,根岸 大助,小金澤 誠,野末 和宏,阿久津 公一,田中 英二,山本 愉章,宮﨑 健,宇賀 一夫,江本 誠,枡田 宗利,末吉 英明,伊東 正智,南村 博二,宮川 英之

あさ出版

人口減少社会に加えて、相続税の大増税により、賃貸物件は供給過多状態にあります。不動産オーナーにとっては厳しい冬の時代。そんな時代でオーナに必要なのは経営的視点と正しい節税の知識です。 本書は賃貸経営の現状から、…

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