本連載では、株式会社インテリックス取締役である俊成誠司氏が、少子高齢化が進む日本における、不動産業界を取り巻く大きな流れの変化と、これからの不動産投資の在り方について、前編・後編の2回に分けて説明します。

供給が減少する新築マンション、一方中古は・・・

実は今、不動産業界ではパラダイムシフト=価値転換が大変な話題となっています。

 

 

これまでの日本における不動産というのは、政府の後押しもあり、新築が重視され、大手のデベロッパー中心に「壊しては建て」の繰り返しでした。しかしながら、日本の少子高齢化が進展するなか、これまでのやり方では通用しなくなっています。

 

ここで、首都圏の新築マンション供給戸数と中古マンションの成約戸数の比較を見てみましょう。

 

2004年には8万戸超あった新築マンションの供給が、すでに約半分以下の3万6,000戸まで減少しています。一方で中古マンションの流通は少しずつ増えていき、2016年には逆転しました。

 

 

 

この流れはさらに加速していくでしょう。背景としては、大きく3つあります。

 

1つ目は「空き家問題」にあります。東京と言えども郊外ではすでに空き家が出てきている現状において、これ以上住宅を建てることの必要性については、誰しも疑問を抱くのではないでしょうか。

 

2つ目は「不動産の高騰」です。不動産は大きく「建物原価」と「土地」に分けられます。建物原価には資材費や人件費が含まれますが、昨今の世界的な建設ラッシュによる資材費高止まりの状況に加え、日本では職人不足の問題があり、今後すぐに改善される見込みはありません。建物原価が下がらない以上、最終顧客へ価格転嫁がしやすい、一部の物件にのみ集中する傾向があります。

 

3つ目は「政府の税制」です。健全な中古住宅市場を活性化させるため、不動産取得税を減税するなど、本格的に中古流通市場の整備に力を注ぐようになっています。

 

資産運用としての不動産投資も「転換期」に突入

原価の高騰による不動産価格への転嫁に加え、今の不動産価格を支えているのは、需要の多様化という側面もあります。大きくは「資産運用としての需要」と「資産防衛」、特に相続対策という需要の2つがあります。

 

アベノミクスによる超低金利の中、預金せず積極的にレバレッジを使い、不動産投資を行う方が急速に増加しました。不動産は第3者の払う賃料で自分の金利を払ってもらうことができるので、自分の信用力を最大限活用できる人ほど、規模も大きくできるのです。

 

一方で、不動産投資家にとって戒めとも言える大きな事件がありました。

 

高利回りをうたって派手に宣伝をしていたシェアハウス運営会社の破綻です。本来であれば、個人の支払い能力を評価して融資する金融機関が、機能不全の状況だったのです。

 

不動産投資は、賃料を払ってくれる借り手の確保や、次回の大規模修繕の時期の見極めだけでなく、万が一の事態に自ら対応できるように、きちんと物件の目利き力をもつことが必須の要件です。

 

2015年の相続税法の改正もあり、富裕層の相続対策での不動産活用が活発化され、中でも都心のタワーマンションの価格は大きく値上がりしました。

 

タワーマンションは、時価と相続税評価額の乖離が大きく節税効果は高いのですが、買ってすぐ売るといった明確な租税回避に利用されたため、一部では否認事例も出てきています。

 

そのため一時期の過熱感は収まっていますが、未だ価格は高いままなので、投資としての利回りは相当低くなってしまいました。

 

また、最近では金融機関の相続対策提案で、借入をして不動産を購入し、他の資産と負債で債務控除をするといった明らかな租税回避が否認されており、今後の不動産を利用した相続対策には十分注意が必要です。

 

やはり、不動産はあくまでも「経済合理性のある投資」という側面を忘れてはいけないでしょう。

 

多様化する「不動産投資形態」

不動産投資の形が多様化していることも大きな変化です。

 

不動産といえば、以前はワンルームやアパート投資のような従来の実物型不動産投資と、J-REITのような証券型不動産投資の大きく2つの選択肢しかありませんでした。しかし現在は、機関投資家向けの私募REITや、不動産小口化のような個人向けファンドが急速に増えています。投資家のニーズに合った投資の形が求められる、新しい時代の到来と言えます。

 

後編では、これからの不動産像についてお届けします。

 

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