今回は、親族外承継(M&A)における「事業価値」の評価について説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

買い手にとっての事業価値を正確に算定することは困難

第三者に対して事業を売却する際の価格は、理論的には、事業価値に基づいて算定されるものであるが、会社の事業価値を正確に算定することは非常に難しい。なぜなら、事業を承継した第三者が誰で、どのように経営するかによって将来実現できる事業価値が異なるからである。

 

例えば、売り手の事業の承継によって買い手側のシナジーが十分期待できる場合には、買い手は相対的に高い価格を提示できるが、シナジーがほとんど期待できない場合や事業の不確実性が大きいと判断される場合には、買い手から提示される価格は相対的に低くなると考えられる。

 

すなわち、第三者承継の際の取引価額は、事業価値を評価する買い手によって異なるものであり、この点が、親族内承継の場合と大きく異なる点である。

 

買い手にとって企業の買収は投資であるから、買い手の経営者が投資の可否を検討する際、将来生み出されるキャッシュ・フローを予測し、投資額が何年で回収できるかを見積もるのが一般的である。

売り手と買い手では「評価する事業価値」が違う

売り手が評価する事業価値と買い手が評価する事業価値が異なる要因として、以下の二つが考えられる。

 

一つは、売り手と買い手で事業の将来性についての考え方が異なる場合である。事業価値を評価する際に前提となる将来キャッシュ・フローは、経営者の将来予想である。将来予想が異なる要因としては、売り手が知っていることを買い手が知らないという「情報の非対称性」が存在していることや、同じ事業でも買い手が強気で売り手が弱気という状況が考えられる。

 

もう一つは、買収によって創出されるシナジー効果である。シナジー効果により、買い手が対象会社の事業を自社に統合させることによって、予想される将来キャッシュ・フローが買収前の両社の将来キャッシュ・フローの単純合計を上回るということがある。そのようなシナジー効果によって、新たな事業価値が創出される。

 

この話は次回に続く。

 

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