前回に引き続き、平成に銀行から提供された商品・サービスと、それに手を出したことで泣きを見た中小企業の実情を見ていきましょう。今回は、「FXの販売拡大」を取り上げます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

不良業者の撲滅後、銀行がFX取引の販売を急拡大

だましファイル⑥「FX外国為替証拠金取引の販売拡大」

 

1998年、外国為替法の改正で、

個人でも外国為替の売買が可能になりました。

そこで登場したのが、外国為替証拠金取引、

いわゆる「FX取引」です。

銀行に預けた証拠金をもとに、

その何倍もの取引ができる、ということで、

レバレッジ取引とも呼ばれます。

 

当初、レバレッジの倍数は無制限でした。

そのため、数百倍のレバレッジ商品などもありました。

益が出て儲かればでかいですが、

損をすると、取り返しがつかなくなります。

それこそバクチです。

案の定、破綻者が続発しました。

 

で、

2010年には50倍まで、

2011年には25倍まで、と、

金融庁はレバレッジの倍数に規制をかけました。

この規制によって、

数百倍のレバレッジを出すような不良業者はなくなりました。

一方、不良業者が撲滅し、これ幸いと、

その後は銀行が、FX取引の販売を急拡大させたのです。

 

倍数の規制が始まった2010年以降、

儲け話しが好きな経営者のもとに、

銀行からFX取引の誘いが急激に増えたのです。

「証拠金が必要ですが、それも当行で準備いたします。

 お客様はレバレッジで稼いだ分だけ、

受け取っていただくことになります。

25倍のレバレッジだと、〇円の円安になれば、

これだけ儲かりますよ。」

などとそそのかし、

大量の米ドルや豪ドル、ユーロ、ポンド等を、

FX取引で販売したのです。

素人に為替相場など読めるはずもなく・・・

しかし、

素人に為替相場など、読めるはずがありません。

相場はどんどん、思惑とは逆方向に向かいました。

「FXのレバレッジのおかげで大損した!」

という経営者が続発したのです。

 

しかも、個人だけでなく、

会社名義でも契約を交わした経営者は、

会社の財務がズタズタになってしまったのです。

FX取引では、

契約時に利益や損失が拡大しすぎないよう、

その限界を設定しています。

要は、銀行の都合の良いように設定されているのです。

で、損失がその限界に到達した時点で、

損失を精算させられ、多額の借金を抱えてしまったのです。

その間、

銀行は契約以降の手数料で、がっちり稼いでいたのです。

 

金融庁はこの2018年に、

レバレッジ上限を現状の25倍から10倍に

引き下げる動きを示しています。

10倍に下がっても、

儲け話しが好きな経営者のもとに、

銀行は誘いの声をかけるはずです。

 

プロの評論家でさえ、為替相場を読み切ることなど、

不可能なのです。

そんな危険なことを、

個人や会社の財産を使って行うなど、

絶対にあってはならないのです。

同時に、そんな誘惑をしてくる銀行が身近にあれば、

取引をきっぱりとやめてほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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