今回は、資金繰りを悪化させる不要な在庫の把握など、会社の運転資金の管理する上で見逃しがちなポイントを見ていきます。※本連載では、有限会社竹橋経営コンサルティング取締役社長、古尾谷 未央氏の著書『借りない資金繰り』(同友館)の中から一部を抜粋し、「借りない資金繰り」のポイントを分かりやすく解説します。

資金繰りを悪化させる「在庫過多」の事例

現金商売を除き必要となるのが運転資金です。資金繰りから運転資金を見る時には,「回収支払サイト差+固定支出1か月分+借入返済1か月分」とします。取引が完了し全て入金された後に仕入や人件費など経費の支払いがあれば運転資金は不要となりますが,多くの企業では支払いが先行します。特に在庫が必要となる業種では顕著です。計画通りに全て製造できれば問題はないのですが,様々な製造上のミスが生じることもあり,それに備えて材料の発注を多めにしているからです。ここで問題になるのが,この材料が他に転用できない場合はデットストックとなり,倉庫の中に溜まってしまうことです。

 

具体的な例を紹介します。ある食品メーカーでは,得意先のスーパーから“大学芋”の注文が入りました。担当者は,この時期はどのスーパーも大学芋を発注してくるだろうと見込み,価格が安くなるからと大量にさつまいもの仕入を行いました。しかし,他のスーパーから大学芋の受注を取ることができず,さつまいもが倉庫に眠ってしまうことになったのです。そして,一部は他の惣菜として転用できたのですが,残りは廃棄になってしまいました。これは資金繰りでは,大きな損失となります。このように,賞味期限がある在庫は顕著です。また,当社の仕入担当者は価格も安いしいつか使うだろうという安易な考えでマヨネーズなどの調味料を大量に仕入れていました。1回の発注の量を多くすると,その分担当者は楽ができます。しかし,それを使い切るまで貴重な資金が寝てしまうことになり,資金繰りを圧迫します。こういったことの積み重ねで,資金繰りは徐々に苦しくなっていくのです。

 

また,あるアパレルメーカーでは,在庫がどうしても過多になりがちでした。洋服は流行り廃りがあり,季節ものは在庫として残っても来年売れることはありません。そのため,仕入れた分を今年中に売り切らねばならないのですが,それがなかなか出来ず資金繰りは苦しいままでした。アパレルメーカーでは,そのような手立てができるかどうかが,企業業績と資金繰りを大きく左右するのです。

数字と現場の整合性を把握することが重要

多くの中小企業では,この仕入部門の担当者が資金繰り改善の方に向いておらず,自分が楽に仕事ができるように仕事のやり方を変えてしまいがちです。こういった企業で倉庫を整理しようとすると,不要な在庫が一杯で廃棄するのに多額の処分費が掛かってしまうこともあります。社長は,こういった状況をしっかりと把握し,改善していくことが大切です。

 

運転資金は単純に決算書の数字を見て計算するのではなく,商売の流れを考え,社員の管理力などを考慮し,数字と現場の整合性を把握することが重要です。実際,必要以上の運転資金の借入は,実質は赤字補填です。こういった企業は,運転資金を管理するという意識もほとんど無く,成り行き経営になっています。この考えをしっかり持たないと,いつの間にか借入金が膨れ財務体質を悪化させてしまうのです。

借りない資金繰り

借りない資金繰り

古尾谷 未央

同友館

重視するのは拡大より継続。資金繰り計画の作成により、金融機関頼みの現状から脱却し、自立した永続企業に生まれ変わる!

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