今回は、基金拠出の際に必要な書類について見ていきます。※本連載は、税理士・行政書士で、医業経営研鑽会会長の西岡秀樹氏、特定行政書士・医業経営コンサルタントの岸部宏一氏、特定行政書士・認定登録医業経営コンサルタントの藤沼隆志氏、行政書士・入国管理局申請取次行政書士の佐藤千咲氏の共著『医療法人の設立認可申請ハンドブック』(日本法令)から一部を抜粋し、医療法人設立時にポイントとなる「基金・財産・負債」について解説していきます。

理事長が全額拠出する場合は「契約書」のみで済むが・・・

前回の続きです。

 

〔4〕募集~引受~割当~基金拠出契約の流れ

 

基金の拠出者が理事長以外にいない場合、つまり理事長が全額拠出する場合は、「基金拠出契約書」のみで済むとしている自治体がほとんどです。

 

一方、拠出者が複数いる場合は、①医療法人から基金引受申込者に基金の募集事項等を通知する、②基金引受申込者から医療法人に引受申込書を交付する、③医療法人から基金引受申込者に割当決定額を通知する、④基金拠出契約書を交わすという順番で手続きを進めます。

 

この場合の書類は、申請する自治体の手引きを参考にしてください。ここでは、一般社団法人日本医療法人協会が作成している書式例を紹介します。基本的に、各自治体の様式もこの書式例に準拠しています。

 

[図表1]書式例「基金の割り当ての決定について」

 

 

[図表2]書式例「基金引受申込書」

 

 

[図表3]書式例「基金の割り当ての決定について」

 

 

[図表4]書式例「基金拠出契約書」

 
 

貸借対照表の「純資産の部」に計上される基金

〔5〕基金の会計上の扱い

 

会計上、基金は貸借対照表の「純資産の部」に計上することになっています。

 

●医療法人の基金について

([医政発第0330051号平成19年3月30日]より抜粋)

 

第3 貸借対照表の区分表示
 

(1)基金(規則第30条の37及び第30条の38並びにこの通知により定める基金をいう。以下同じ。)の総額及び代替基金(第2の13により計上された金額をいう。)は、貸借対照表の純資産の部に基金及び代替基金の科目をもって計上しなければならないこと。
 

(2)基金の返還に係る債務の額は、貸借対照表の負債の部に計上することができないこと。

 

基金は純資産の部であればどこに計上しても構わないのですが、厚生労働省が定める医療法人における事業報告書等の様式を見ると、以前は純資産の部の「Ⅰ」にありましたが、現在は次のように「Ⅳ」が基金になっています。

 

しかし、基金よりも代替基金が上にあるのは違和感があります。また、実務上で問題になるのが、多くの会計ソフトは「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」までは対応しても「Ⅳ」は出ないということです。

 

通知上は純資産の部に計上するということしか指定されていないので、純資産の部の「Ⅰ」に基金が入っている以前の様式を使っている税理士が多いと思います。

 

(注)1.この様式は「新法の医療法人」が使用します。
(注)1.この様式は「新法の医療法人」が使用します。

 

 

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    本連載は、2017年9月15日刊行の書籍『医療法人の設立認可申請ハンドブック』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    編者:医業経営研鑽会 著者:西岡秀樹、岸部宏一、藤沼隆志、佐藤千咲

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