前回に引き続き、不動産投資の収益を具体的に評価する「3つの指標」について見ていきましょう。今回は、家賃の設定方法について詳しく説明します。

「近隣物件の相場」から家賃を設定する

前回の続きです。収支計画を策定する際に大切な要素は希望値や期待値で策定するのではなく、期待値を下回るくらいで算出しておいたほうがベストです。例えば利回りについて検討する場合には、家賃の設定が重要なポイントとなります。

 

家賃は一般に、近隣相場に基づいて決めます。築年数、広さ、設備仕様、エリア、駅からの距離・・・これらがすべて同じA物件、B物件、C物件があれば、家賃は自然と同じような額に収まっていきます。

 

A物件の家賃は9万円、B物件は7万円、C物件は6万円などというように1万円や2万円も差がつくようなことはまずありません。通常は、A物件の家賃は8万9000円、B物件は9万円、C物件は9万1000円といった形で、ほとんど同じ金額に接近するはずです。

 

そうした家賃の近隣相場を前提として、収支計画を立てるときには「この物件は9万1000円で貸せるだろう」ではなく、「現状なら最低でも8万8000〜8万9000円で貸せるだろう」というくらいのゆとりを持った感覚で判断しましょう。

利回りを求めるなら、家賃は「安め」に設定しておく

しかし、なかには近隣相場とのバランスを考えずに、家賃を過度に高めに見積もるオーナーもみられます。とりわけ、現在すでに借主が存在する物件(いわゆるオーナーチェンジ物件)に投資するようなケースではそうした傾向が目立ちます。次の具体例をもとに説明しましょう。

 

「甲マンションには、10年前に9万5000円の家賃で貸した借主が今も住んでいる。だが、その間に賃料相場は下落しており、甲マンションを今、新たに貸すとなれば、近隣相場から9万円が妥当と考えられている」

 

このケースで利回りを求める場合、家賃を高く見積もる人であれば、賃料を現状の9万5000円のまま検討し、購入価格から利回りを計算して収支計画を立ててしまうかもしれません。

 

しかし、この物件を購入したあとで入居者が退去した場合、9万5000円の賃料で新たな借主を募集することは難しいです。近隣相場の9万円もしくはそれ以下に落とさなければ、借りる人は現れないでしょう。

 

したがって、甲マンションの利回りを求める場合には、9万5000円ではなく9万円もしくはそれ以下の賃料を前提に計算するのが適切なのです。

 

家賃を高く見積もり過ぎると、物件の本来の利回りを、ひいては物件そのものの価値を見誤る危険があります。そうなると、不当に高い価格で物件を購入することにもなりかねません。それを避けるためにも、収支計画を立てる際には家賃をシビアに見積もることを心がけましょう。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2017年12月25日刊行の書籍『不動産投資の「勝ち方」が1時間でわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資の「勝ち方」が1時間でわかる本

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吉村 拓

幻冬舎メディアコンサルティング

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