2月に入ってから波乱の展開が続く米国株相場。今回は、こちらも大きく動き始めた「為替相場」を読み解くためのポイントを解説する。

日銀が金融緩和の出口を模索・・・は時期尚早!?

前回の続きである。

 

為替について、どう見ているか? 今回、ドル円為替が110-114円のレンジを下回ってきた発端は、日銀の金融政策が金融緩和の出口に向かっていくのではないかとの観測と、ダボス会議に端を発したトランプ政権の「ドル安」政策への転換説にあった。

 

今年、1月9日に日銀金融市場局が実施した2種類の超長期国債オペで、100億円ずつ買入れ額が減額されたことが、日銀による金融緩和の出口模索と勘ぐられてしまい、そのことが妙にクローズアップされてしまっているが、黒田日銀総裁はかねてより「インフレ率を目標2%より上振れさせ」それが実現するまで「ベースマネーを増やし続ける」ことにコミットしている。

 

 

日本のインフレ率は、一向に上向く気配がないのが現状である。円高を招いてしまっては、物価目標2%が一段と遠退きかねないことを理解している日銀が、近々、動くとは到底考えられない。日銀が金融緩和の出口を模索しているというのは「下衆の勘ぐり」である。

 

日銀の独立性の問題は置いておくが、アベノミクスの三本の矢のひとつが、紛れもなく「日銀の長期金融緩和と円安」というのは、安倍首相を含めて公言している事実である。そして黒田総裁の続投は、ほぼ固まったということも既報のとおりである。国会の同意は必要だが、2023年まで任期が延長されることになれば、「ベースマネーを増やし続ける」ことへのコミットは、継続される。

 

また、米国がトランプ政権下で積極財政政策を打ち出し、景気を刺激する方向にあることと、「ドル安」政策が引き起こすインフレリスクとを考えれば、整合性が取れないと筆者は考えている。トランプ大統領が、予算教書に合わせて貿易赤字の問題を蒸し返すなどしており、為替市場には米政権がドル安志向の政策に転換したとの思惑が働きやすい状況で、ドルロングのポジションを解消する動きが一時105円台まで、相場を動かした。

株価の落ち着きと共にドル売りも沈静化へ

一方で、株価の波乱の引き金は、物価の上昇懸念にあったことも見逃してはならないのである。貿易赤字の問題は、旺盛な米国経済の消費にあるのであり、これは為替レートによって一朝一夕に修正できるものでもなければ、抑制できるものでもない。

 

むしろドル安は、輸入物価の上昇を招く。これが現在の賃金上昇懸念に加わるとなれば、インフレ懸念が台頭して、FRBは予想を上回った利上げを実施することにもなりかねない。そうなれば本格的に長期金利の上昇を引き起こす可能性が高まる。その場合、株価が耐えられるのか? おそらく先週の調整では済まない大規模な混乱が生じるのではないだろうか。

 

もうひとつ、アベノミクスの首謀者でもある菅官房長官は、注目に値する。菅長官は、為替相場の安定・円高阻止に高い関心を持っていることを公言してはばからない。過去の発言では、「日本企業が見通しを立てられるような環境にすることがものすごく大事だ。私の重要な危機管理のひとつに為替がある」「私たちの為替への意識は強く、中途半端な決断ではない」というものがあった。

 

米国株の急落が波及し、日経平均株価が終値で前日比1000円を超える下落を記録した2月6日にも、菅長官は「為替の水準にはコメントしないが、安定はきわめて重要。引き続き為替市場動向を緊張感をもって注視していく」と記者会見で述べている。

 

株式市場同様に、やや混乱している為替市場だが、米国債(10年債)の利回りは2.9%台まで上昇し、金利差という面ではドル支持要因となっている。この点も、リスクオフへの動きがもたらす今回の円高が、それほどのマグネチュードにならないことに繋がる。株価の落ち着きどころを待って、ドル売り仕掛け的な、円高への振れは収まるであろう。向こう3ヶ月では105-112円程度のレンジで動くことになるだろう。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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