今回は、「小規模宅地等の特例」適用の条件と、その注意点を見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

2013年度の相続税制改正時に行われた「重要な変更」

なお、「特定居住用宅地等の特例」には、いわゆる「実家」以外にも適用される場合があります。それは「被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等」です。簡単にいうと、「父親が所有している広い敷地の上に、父親が建てた家(実家)と子どもが建てた家(子どもの自宅)があって、親子が生計を一にしていた場合に、父親が亡くなって敷地をその子どもが相続する場合」です。

 

ただし、子どもが所有する建物の敷地該当部分だけです。このとき、「生計を一にしていたかどうか」はとても要件の解釈が難しいので、専門家に事前に相談したほうがよいでしょう。

 

いわゆる「二世帯住宅」については、2013年度の相続税制改正時に重要な変更がありました。それまでは「二世帯住宅の建物内部で行き来できる構造でなければ『同居する親族』とはみなされず、小規模宅地等の特例は適用されない」とされていました。

 

ところが、改正後は二世帯住宅の内部は行き来ができない完全分離型二世帯住宅であっても「同居する親族」とみなされ、小規模宅地等の特例が適用されることになったのです。これは二世帯住宅で生活する相続人の方々には朗報です。

 

ただし、二世帯住宅でも、親子で建物の所有権を別々にしている「区分所有建物」の場合は、先の「広い同一敷地内の母屋と離れ」と同様に、「生計を一にしていたかどうか」が適用要件となります。しかも敷地も区分所有建物ごとの按分評価となりますから注意が必要です。

適用の可否は、事前に専門家と相談を

この「小規模宅地等の特例」は、実家を相続する親族や家業を継ぐ親族が、過大な相続税がかかることで実家を手放したり、家業が廃業に追い込まれたりすることは望ましくないという趣旨からできた制度です。「実家を大切にしたい」人や「家業を大切に守っていきたい」人は、特例の適用を受けられるようにしたいものです。

 

ところが素人考えでは適用されないケースがあります。税務署も簡単には節税をさせてはくれないのです。ですから、ぜひとも専門家に事前の相談をすることが大切です。なぜ事前かといえば、相続した後では「3年間賃貸暮らし」とか、「生計を一にする」といった要件を満たせていない場合があるからです。

 

小規模宅地等の特例は、不動産を相続するときに相続税評価額が最大で8割も減額されるという大変ありがたい制度です。ただし、この特例の適用を受けるためには「相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていること」と「特例の適用を受ければ相続税がかからない場合でも、相続税の申告手続きをしなければならない」という条件があるのです。

 

「8割も相続税評価額が下がる」というとても大きな恩典を受けたいなら、相続税がかからないと考えていても「相続税の申告書の提出」を絶対に忘れないでください(筆者著書『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』第5章にて詳述)。

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    藤戸 康雄

    時事通信出版局

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