前回に引き続き、60歳以上での起業で意識したい「会社の育て方」を見ていきましょう。今回は、目標の立て方も併せて説明します。

会社を立ち上げたら「翌日から仕事がある」状態にする

しかし、いきなり売上1億円などという目標を立てるのは、リスクに対して実現できる可能性が低過ぎますから、1年目、2年目は、とにかく無理がない目標を立てるのが賢明です。

 

それに加えて、「立ち上げたら翌日からすぐに仕事があるような状態にしておくこと」。すぐに仕事を始めたとしても、お金が入ってくるのはずっと先になりますから、それまでは利益がないどころか、まったくお金が入ってこない状況も考えられます。

 

仕事がなければ、あっという間に資金繰りが厳しくなるのが、サラリーマンとの大きな違いです。定年退職後に起業を考えている人は、自分の会社を立ち上げたらすぐに仕事を始められるように、サラリーマンとして勤めているうちにある程度までは準備をしておくことが必須でしょう。そのためにはネットワークも築いておかなくてはなりません。

なぜ「趣味」を仕事にするべきではないのか?

最後に、「好きなことをやってはいけない」という点も付け加えておきましょう。

 

やはり、仕事は「こういうことをやってくれないか?」と人からお願いされたほうがいいのです。ビジネスは誰かに求められて初めて成り立つものです。

 

「自分が好きな商品だから買ってくれるに違いない」と思っていても、買ってもらえるとは限らないでしょう。往々にして、自分の好みを中心に考えると、採算性を度外視してしまいます。その結果、あっという間にビジネスが立ち行かなくなります。

 

好きなことを仕事にしたいと、退職金をつぎ込んでそば屋などを始める人もいますが、起業としては賛成できません。まず、修業をして何十年も店を続けてきた同業者に敵かなうわけがありませんし、これだけ多くの飲食店があるなかで「好きだから」という理由だけで立ち上げた店が生き残っていくのは難しいでしょう。そもそも、店を開いたら接客や会計、掃除など、やりたくない仕事もやらなければならなくなります。

 

自分の趣味で、一人でやる分には構わないと思いますが、経営者として人を雇う立場になると責任が生まれますから、趣味を楽しむどころではなくなってしまいます。そういう意味で、趣味は仕事にするべきではないというのが私の考えです。

 

60歳か65歳で起業をするとしたら、続けられるのは長くてもせいぜい15年か20年ですから、のんびり構えている暇はありません。その間に会社を黒字にして社会に貢献できるようなことを成し遂げるには、猛スピードで仕事をするくらいの気持ちが必要でしょう。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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