米国不動産投資における「山火事」のリスクとその対策

アメリカ西海岸・中西部州では夏から秋にかけて「山火事」のリスクが非常に高まることから、不動産投資においても、そのリスクを念頭に置く必要があります。そこで今回は、山火事による被害の詳細や、山火事が起きにくい地域、山火事被害をカバーする保険について見ていきましょう。

湿度が高く、山火事のリスクが低い東海岸

前回は、米国西海岸・中西部州においては、貸し手が比較的はやく担保処分をすることが可能であることを説明しました。今回は、米国西海岸で例年、まさに今この頃によく起こる山火事について紹介しましょう。

 

米国で夏休みが終わると、9月初めのレーバーディ休暇明けから学校の新学期が始まります。そして初霜が下るころ、9月下旬から11月にかけて昼夜の寒暖差が大きくなる、残暑がやってきます。

 

アメリカ人はこれを「インディアン・サマー」と呼んでいますが、どうやら「忘れたころにやってくる襲来」という意味が込められているとも、インディアンが住む砂漠地帯から熱風が吹くとも言われています。なぜこう呼ばれているか、この言葉の由来等はいまだに判然としていないようです。

 

連載第29回では気候をテーマに執筆しましたが、それらとも密接に関係して、米国西海岸では夏から秋にかけて乾燥が続くことから、特に海水温が上がるエルニーニョとの関連性が高いと言われています。それにより、水不足(干ばつ)と自然発火の山火事が頻繁に起こります。

 

その地域に生活する人々は、水不足のために庭の芝生を人工芝に変えて、庭に撒く水や水道水を節水します。普段の生活レベルで住民は山火事に悩まされているのです。

 

昨年は、ベイエリアの北、サンタローザからヒドゥンバレーレークと、ロサンゼルス郊外サンバーナディーノで、今年はワシントン州シアトル郊外・ロサンゼルス北部で、発生した山火事の煙が地域一帯に停滞したそうです(ニュース記事はこちらを参照→http://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-brush-fire-verdugo-20170901-story.html)

 

特に、ロサンゼルスが位置する南カリフォルニアは、水源を北カリフォルニアに頼っているため、この時期は水路(河川)の底が常に見えており、いつも大変な被害を被っています。

 

ネブラスカ大学リンカーン校にある全米干ばつ緩和センターのウェッブサイト(http://droughtmonitor.unl.edu/Home.aspx)で、全米の干ばつの状況が分かります。上が昨年の状況、下が現在の状況です。

 

[図表1]全米の干ばつの状況(昨年)

 

[図表2]全米の干ばつの状況(2017年8月29日現在)

 

州別潜在的な被害戸数で見ると、人口密集地という理由もありますが、カリフォルニア州とテキサス州が全米でも極めてリスクが高い州となっています。一方、東海岸は湿度が高いことから、放火等の人為的な火事以外あまりリスクは高くないと言えるでしょう。

 

[図表3]山火事による潜在的な被害住宅(戸数ベース)

(出所:コアロジック社)
(出所:コアロジック社)

 

以下の図表4から読み取れるのは、カリフォルニア州を含む砂漠/南西太平洋地区と、テキサス州を含む南部ロッキー山脈/中西部地区が今後も被害金額も大きいと思われます。

 

[図表4]山火事による潜在的な地域別被害金額(再建築コストベース)

(出所:コアロッジク社)
(出所:コアロッジク社)

 

過去の山火事を時系列的にみると、傾向として、山火事の件数自体は減少しているものの、1件あたりの被害面積が拡大しています。

 

これは人口密集地が郊外(山火事危険地帯)へ向かって住宅開発が広がりを見せていることと相まって、山火事危険地域内での被害拡大よりは、風の通り道で近隣のコミュニティへ飛び火する傾向から来ていると言われています。

 

[図表5]時系列山火事件数と被害面積の推移

(出所:コアロジック社)
(出所:コアロジック社)

山火事は火災保険でカバーできるが、保険料は高額

一般的に、山火事も火災保険でカバーされるわけですが、個別の保険契約によっても事情が違いますし、頻繁に起こる地域では保険料も高くなります。特に、危険地帯に属しているか、草むらと森林からどのくらい離れているか、消防水源からの距離、消防局から距離、屋根の材質等により、保険料が決まってきます。

 

カリフォルニア州政府も特別の保険制度を設けて山火事被害をカバーしようとしていますが、そのような地区での戸建て火災保険料が、最低年間数千米ドルから5000〜6000米ドルも払って財産を維持するため、それなりの資産価値がなければ意味がないと言えるでしょう。

 

そこに住み財産を維持したいとする動機としては特別なものがあるに違いないと感じていますが、アメリカ人が好む高級住宅地域の特徴として(最近の傾向は変わりつつありますが)、駅近とか徒歩に便利という衣食住接近より、人里離れ海や街が見下ろせる山の上や中腹に所在していることの方が多いといえます。

 

イメージとしては、木が立派に生い茂っている林に囲まれた、軽井沢や八ヶ岳などの別荘地のようなイメージになります。当然そのような場所は乾燥すれば自然発火による山火事が起きやすく、一旦起これば消防車がアプローチしにくい場所となります。

 

そのような場所の住宅は価値が高いということになり、それだけの保険料を払ってもよしとする感覚があるのだと思います。なお、本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。

 

[図表5]山火事危険地区(http://www.fire.ca.gov/fire_prevention/fire_prevention_wildland_statewide)

(出所:カルフォルニア州消防局)
(出所:カルフォルニア州消防局)

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連載集積するイノベーション産業と頭脳――米国シリコンバレー不動産投資の最新事情

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

北海道出身、一橋大学経済学部卒業。UCLA不動産関連科目履修。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)開発金融部海外不動産グループ(米国担当2年半)、ユニオンバンク(7年加州駐在)にて、不動産を中心とした開発金融・アドバイザリー業務を経験。2000年に退職後、ローンスターファンド・ラサールインベストメント等の外資系投資ファンド・日系投資会社、ブルックス・グループで、不良債権・再生・不動産・未公開企業等のオルタナ投融資の実績と経験。2017年7月より、クラウドクレジット商品部にてソーシャルレンディング関連販売ファンド組成業務に就き、現在に至る。

著者紹介

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