ハワイの別荘に行くだけなのに…突然の「入国拒否」という災難

ハワイやアメリカ本土への入国時、いきなり別室に呼ばれて厳しい取り調べを受けた挙句、入国を許されずに日本へ送還されるケース、突然の入国拒否に遭ったものの、その理由がまったくわからないケース…。このような状況に直面することは、決して珍しくありません。本連載では、アメリカでの入国拒否から身を守る実践的なノウハウを、3つのポイントにまとめて紹介します。

いつもどおりの「入国審査」のはずが…

7時間のフライトを終え、着陸する機体。前方左側に見えるハッチが開き、降機を促すアナウンスが流れる。機外に出て外気を吸い込み、自分の足が地を踏んでいることを実感する。このときの安堵感というのは、他に比べようがない。

 

その日、A氏はホノルル空港の入国審査待ちの列にいた。

 

ここを抜ければもうそこは常夏の地、ハワイだ。入国審査には既にかなりの列ができており、いささかげんなりするが、自分の番が徐々に近づいてくる。ああ、もう少しだ。

 

5年前に買ったハワイの別荘。購入してからは、まとまった休みが取れるたびに、そこで羽を伸ばしてきた。航空券を予約するのだって、新幹線の切符を買うのと大した違いはない。ハワイの別荘、そこは海外と言えども、もはや私にとっては軽井沢の別荘に行くような気分だった。いつもどおりの入国審査。緊張することなど何もない。

 

「Hello.」

 

笑顔で挨拶をするA氏。入国審査官も微笑み返す。入国審査官とA氏のやり取りが続く。

 

・・・ん? 今回はずいぶんたくさん質問してくるな。アメリカの政権交代の影響だろうか? だが大丈夫、後ろめたいことなど何一つないのだから・・・。

 

「Please come with us.」

 

「えっ?」

 

入国審査官が発した思わぬ英語に、すぐに脳が対応しない。もしかして隣のレーンの人に対して言ったのか?

 

「Pardon me?」

 

「Please come with us.」

 

先ほどよりはっきりと、力を込めて発せられた入国審査官の言葉は、まさしくA氏に対してかけられたものだった。頭をフル回転させて今しがた自分が行った入国審査官とのやり取りを思い返してみる。まず渡米の目的を聞かれ、バカンスと答えた。滞在先を聞かれたので、自分が所有している別荘の住所を答えた。あとは、ハワイが大好きだとか、少し上機嫌にリップサービスも加えて和気あいあいとやり取りをしていたつもりだった。一体全体何が悪かったのか、皆目見当も付かない。

 

その後の出来事は、まるで悪夢を見ているかのような現実感の乏しいものだった。別室に連れて行かれた後、複数の入国審査官から様々な質問を受けた。これまでの渡米歴とその理由、別荘の所有者が誰であるか、日本での仕事の内容、アメリカで働いていたことはあるか等々・・・

 

「You are not eligible to enter the United States(あなたにはアメリカに入国する資格がありません)」

 

最後に入国審査官から静かに発せられた言葉に、A氏は呆然となった。そんなA氏の様子をよそに、淡々と書類を作成していく入国審査官。もう頭は真っ白だ。入国審査官から何やらQとAがたくさん書かれた紙を見せられ、サインを迫られる。自分が何にサインをしているのかもよく分からないまま、書類にサインをするA氏。その先のことは良く覚えていない。気が付けば日本行きのフライトに乗せられていた。

 

これが入国拒否? どうして私が? もう一生アメリカに入国することはできないのだろうか? ハワイに残してきた別荘はどうなるんだ・・・?

入国拒否に至るまでのプロセスとは?

今回は、実際に入国拒否に遭ってしまうまでのプロセスについて、具体的に説明したいと思います。

 

ESTA(ビザ免除プログラム)認証による渡米、そして入国拒否を受けて日本に帰国させられるまでのプロセスは以下のとおりです。

 

①インターネットからESTAの申請を行い、認証を得る

②飛行機に搭乗する

③現地の空港に到着する

④入国審査官による審査を受ける

 

ここまでは、通常の入国と同様になりますが、以下⑤から変わってきます。

 

⑤入国審査官から中々許可をもらえず、多くの質問を受ける

⑥追加確認が必要という理由で別室に連れて行かれる

⑦複数の入国審査官から別室で様々な質問を受ける(荷物、パソコン、携帯の確認なども受ける場合もあります)

 

ここで誤解が解けて入国許可が下りることもありますが、うまくいかない場合は、以下⑧に発展します。

 

⑧入国拒否の宣告を受ける

⑨署名にサインし、送還手続きに移行

⑩帰国のための飛行機に搭乗させられる

 

A氏には不法滞在歴も不法就労歴も、犯罪歴もありませんでした。それにもかかわらず、突きつけられる入国拒否という非情な現実。これが入国拒否の実際です。

 

次回は、どのような方が入国拒否に遭ってしまうのか、そして、入国拒否を回避するためにはどのような点に注意すべきかについて説明します。

 

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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弁護士法人
イデア・パートナーズ法律事務所 所長 弁護士

東京弁護士会所属
北海道大学理学部物理学科卒業
東京大学大学院理学研究科修了
北海道大学法科大学院修了

【主な役職等】
・経営革新等支援機関(平成25年4月~現在)
・犯罪被害者支援委員会研修員(平成21年4月~平成22年4月)
・非弁護士取締委員会委員(平成25年4月~平成27年4月)
・住宅紛争審査会紛争処理委員(平成27年9月~現在)
・弁護士会の各法律相談等担当(知的財産権・ライセンス契約分野,遺言信託分野,住宅専門家相談,女性のための法律相談)
・中野商工会議所相談担当
・足立区法律相談担当

民間企業(富士通)でシステムエンジニアとして勤務した後、平成20年に弁護士登録。米国渡航、ビザ・永住権等の問題はもちろんのこと、日本の各法分野(相続、不動産、知的財産、交通事故等)についても明るい。

著者紹介

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