工事のスケジューリングで組み込まれる「バッファー」の問題点

前回は、プロジェクトの進行のカギとなる「変動制」「従属性」とは何かを説明しました。今回は、工事のスケジューリングで組み込まれる「バッファー」の問題点を見ていきます。

「タスクの細分化」で余計なバッファーが必要に・・・

次は実際に建設工事のスケジュールを立てる時にはどのようなことが起きているかを考えてみます。

 

建設工事の全体管理者から、各々のタスクの管理責任者である外注専門工事業者へ、タスクの見積期間を提示するように求められた場合、彼らはどのような回答をするのでしょうか。

 

あまりにタイトな見積期間を回答した場合、その約束を守れない可能性が高くなります。実際に守れなければ、元請先からの評価が下がって信用を失い、今後の取引に悪影響が出るかもしれません。

 

このため、普通はよほどのことがない限り必ず守れる見積期間を回答するはずです。3日間で終わるタスクであったとしても、「万が一遅れると困るから4日間で報告しておこう」といった感じです。

 

このようなことが建設工事における細分化された各々のタスクごとで行われたらどうなるでしょうか。

 

例えば10の小さなタスク(架設工事、大工工事、左官工事、屋根工事、電気設備工事、内装工事、管工事等)ごとに1日の安全余裕期間(バッファー)を持ってしまったら、建設工事全体のスケジューリングの段階で10日間のバッファーが組み込まれてしまうのです。

早期にタスクが終了しても、報告が上がる可能性は低い

早期にタスクが終了した場合はどうでしょうか? 計画よりも早くタスクが終了したという報告が、工事の全体管理者に対してなされるでしょうか。

 

例えば7日間かかると見込んでいたタスクでも、大工が頑張ってくれたので5日間で終わったなどということはよくあります。そのような場合に個々のタスクの管理者は「5日間で終わった」と工事の全体管理者に報告するでしょうか。おそらくしません。

 

その理由は大きく3つあります。

 

第一に、5日間で終わるタスクを7日間かかると計画したのだから、計画時に2日間のバッファーを組み込んでいたことが知られてしまいます。自分の会社は見積能力がないのですと自ら宣言しているようなものです。

 

第二に、次回以降の同様のタスクについてバッファーを織り込む交渉の余地がなくなり、次回以降のプロジェクトで非常にタイトなスケジュールが課される可能性が高くなります。

 

第三に、担当したタスクに後日欠陥が見つかった場合、「予定通り7日間かけていればこんな欠陥は生じなかったのではないか」「あせって2日間短縮したから欠陥が生じたのではないのか」と叱責される可能性があります。

 

従って、計画よりも早くタスクが完了したとしてもそれは報告されず、バッファーは無為に消費されることとなる可能性が非常に高いのです。

本連載は、2017年5月26日刊行の書籍『「事業再生」の嘘と真実 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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株式会社Corporate Solution Management 代表取締役

公認会計士。
京都大学法学部卒業後、民間企業勤務を経て公認会計士試験に合格。
KPMG勤務を経て独立し、株式会社Corporate Solution Managementを設立。
会計的手法のみならず、心理学や行動経済学に基づくマーケティングやブランディング理論を独自に構築、
これまで約100社に及ぶ地方中小企業を経営危機から救済。
金融機関から指名が絶えない屈指の再生請負人。

著者紹介

「事業再生」の嘘と真実

「事業再生」の嘘と真実

弓削 一幸

幻冬舎メディアコンサルティング

コスト削減、管理会計、人事評価制度――ロジックだけに頼るのは今日で終わり! 中小企業約100社を経営危機から救った事業再生のプロが、稼げる事業体質作りを指南。 中小企業・小規模事業者には厳しい経営環境が続いており、…

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