今回は、銀行と結ぶ融資契約の「財務制限条項」の重要性について、「東芝」を例に見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「自己資本比率」等が融資継続の条件になるケースも

融資継続か否か、このところ、
東芝VS銀行団のバトルが過熱しています。
月末が近づくにつれ、この記事が増えてきます。
この交渉には、さまざまな駆け引きが渦巻いています。
その内容は、
中小企業においても、参考とすべきことが多いのです。

 

関連記事では必ず、「銀行団」と記載されています。
東芝は1月、各銀行を集め、
融資継続依頼へ向けての説明会を行いました。
このときから、各銀行との個別交渉ではなく、
「銀行団」との交渉になっているのです。

 

東芝は、各銀行と「財務制限条項」による融資契約を
していました。
これは、融資を継続するには、
自己資本比率を、○%以上で維持すること、
などといった、条件を定めた融資です。
その条件を下回ったら、銀行は即座に全額返済を要求できますよ、
というのが、「財務制限条項」なのです。
別名「コベナンツ契約」と言われています。

 

数年前、ワタミがこの条項に触れる危険があり、
稼ぎ頭の介護部門を売却し、なんとか危機を乗り切りました。
中小企業においても、
”コベナンツ契約でいかがでしょいうか?”
と、声をかけてくる場合があります。
その内容を知らずに“お願いします。”などと返答すると、
あとあと、えらいことになるのです。

 

東芝においては、その条項詳細は明らかにされていませんが、
制限条項に触れる可能性が高まったわけです。
で、各銀行を集め、今後の見通しや、
制限条項の見直し依頼、などをしたわけです。

融資をしている80行もの「銀行団」の力関係

ちなみに、
東芝の借入金は、2016年12月時点で、
約1兆500億円とされています。
この融資をしている「銀行団」とは、何行くらいあるのか?
約80行とのことです。
そのメインは、みずほ、三井住友などのメガバンク4行です。
4行で約5800億円を融資しています。
1行あたり1000億円~1800億円です。
残りの約5000億円が、各地銀や大手国内生保です。
1行平均で約65億円です。
東芝の工場や関連会社がある地域の、第一地銀が、
軒並み顔をそろえています。

 

融資金額に大きい小さいがありますから、
「銀行団」といっても、その中での力関係があるのです。
事前のウラ取引的なことも、当然発生してきます。
そして、それら80行は、
それぞれに、東芝を格付け(スコアリング)しています。
ところがこの格付けがまた、各銀行の都合に応じた、
極めていいかげんな格付けなのです。
「銀行団」の、本音と建て前を、追っていきたいと思います。

 

(続)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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