今回は、銀行に求められている「中小企業への事業性評価」について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

財務状況・事業性を評価して融資をする「事業性評価」

銀行交渉を進めるうえで、
障害になるのは、
銀行の担当者や支店長だけではありません。
行く手をさえぎる、さまざまな人がいるのです。
「事業性評価」という言葉が日経新聞でも、
チラホラと見かけるようになってきました。

 

「事業性評価」とは、
財務状況の安全性だけに頼らず、
その会社の事業性を評価して融資しなさい!
という、金融庁から銀行に対する、指導項目です。
2014年から、金融庁のなかで出始めた言葉です。
要は、格付け(スコアリング)にだけ頼ってはダメ!
というわけです。

「新たな融資による地方創生」が狙い

その発端を紐解いてゆくと、原点は、
地方創生=地方の中小企業の活性化、にあります。
長引くデフレ不況のなか、特に地方においては、
リスケジュールで借入返済期限を延ばしてもらった、
返済の債務を一部免除してもらった、
などという会社が増えました。
で、これらの金融施策のおかげで、
息を吹き返し、現在は安定した事業活動を取り戻した、
という会社もあるのです。
(息を吹き返さないのが、いわゆる、ゾンビ企業です)
となると、それらの復活した会社は、
新たな投資で事業を再構築したい、と考えます。

 

ところが、金融機関は、
“御社はリスケをされていますから…。”
“御社は債務免除の履歴がありますからね…。”
と言って、新たな融資をしないのです。
格付け(スコアリング)だけで見ると、当然、そうなります。
その実態を知った金融庁が、
“こんなことでは、
 地方の中小企業が再び活性化する道を閉ざしてしまう!”
となり、
“財務諸表における負の遺産にとらわれず、
 今現在の事業そのものを評価しなさい!”
となったわけです。

 

なので、そもそもは、
融資の道を閉ざされつつある中小企業に、
しっかりと光をあてなさい、ということが、
「事業性評価」の狙いなのです。
それが最近の傾向を見ていると、
全ての融資が「事業性評価」へ変わってゆく、
という具合に勘違いされている、様子を感じます。

 

そんなことはムリであり、する意味もありません。
その理由については、次回、書かせていただきます。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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