ノベル版『女騎士、経理になる。』~第3章その⑦

幻冬舎コミックス運営のWEBマンガ雑誌「デンシバーズ」と幻冬舎ゴールドオンラインによる特別コラボ企画。デンシバーズの好評連載『女騎士、経理になる。』の原作小説で、2016年6月24日に発売された単行本『女騎士、経理になる。①鋳造された自由』のプロローグと第1章、第2章、第3章を無料公開します。今回は第3章「リテラシー」その⑦です。

▼村はずれの小川

 

女騎士「川べりで誰かが踊っているようだな」
そばかす娘「~♪ ~♪」

 

男の子「わー! すごいやお姉ちゃん!」
女の子「もっと踊って~」

 

そばかす娘「あはは! ありがと! それではアンコールにお応えしてもう一曲……」

 

歌声 ~♪ ~♪

 

司祭補「あの服装、農奴の子供たちですわね」
黒エルフ「踊りに見とれて、あたしたちの目的を忘れないでよ?」

 

司祭補「グーテンベルクさん、ですわね?」
女騎士「おっとそうだった。……そこの君たち!」

 

子供たち「!!」

 

女騎士「ちょっと尋ねたいのだが、このあたりにドワーフの──」

 

そばかす娘「申し訳ございません!」ガバッ

女騎士「!?」

 

そばかす娘「どうかお許しください!」
女騎士「え、えっと?」

 

そばかす娘「今日のぶんのお仕事は終わっております。作業のあとの水浴びをしていただけで……」

 

女騎士「何かカン違いしているようだな。私はただ道を訊こうとしただけなのだが」
そばかす娘「……領主様のお使いの方ではないのですか?」

 

司祭補「わたしたちは港町から来たのですわ」
そばかす娘「そっか、よかったぁ」ホッ

 

黒エルフ「ずいぶん慌てていたわね」
そばかす娘「領主様は、私たちが遊んでいると怒るんだ。サボらずにもっと働けって」

 

女騎士「しかし、今日の仕事は終わっているのだろう?」
そばかす娘「もちろん! 仕事が終わってないのに遊ぶわけないよ」

 

司祭補「では、領主様にもそう説明なさればいいのではありませんか」

 

そばかす娘「ムダね。あの人は農作業のことを何一つ分かっちゃいないもの。土を耕しさえすれば、真冬でも芽が出ると信じているような人なの。……ところで、お姉さんたちは都会から来たんだよね?」

 

女騎士「帝都には及ばないが……。まあ、この村に比べれば都会だな」
そばかす娘「それなら、劇団の偉い人と知り合いだったりしない?」

 

黒エルフ「劇団? 小さな一座なら取引先の1つにあるけど……」

 

そばかす娘「だったらお願い、その人たちに会わせて! 私、踊り子になりたいの! 将来は帝都の大劇場(グランテアトロ)の舞台に立ちたいんだ!」

 

黒エルフ「はあ? そんなの無理に決──ふごっ!?」
女騎士「ゆ、夢を持つのはいいことなのだ!」

 

黒エルフ「~~~!」

 

司祭補「だからここで踊りを練習していたのですね?」
そばかす娘「うん!」

 

女の子「お姉ちゃんはね、村でいちばんの器量よしなんだ!」
男の子「それに踊りがとっても上手なの!」

 

そばかす娘「そ、それほどでも」テレテレ

 

黒エルフ(この村でいちばんの美人と言ったって、全国平均で見たら大したことないじゃない。踊りはいかにも田舎者って感じだったし……)

 

女騎士(声が大きいぞ!)

 

司祭補「踊りにあわせて歌っていましたわね。あれは何という歌ですの?」
そばかす娘「名前はまだないよ」

 

司祭補「まだ?」

 

そばかす娘「あの歌は、私が勝手に作ったの。本物の踊り子がどんな曲にあわせて踊るのか知らなかったから……」

 

女騎士「ふむ。お前は本物の舞台を見たことがないのだな」

 

そばかす娘「いつか見てみたいなぁ、帝都歌劇団の『コケモモ物語』……大劇場の一等席で……」キラキラ

 

黒エルフ「何言ってんのよ。農奴の収入じゃ一生かかっても無──ふごっ!?」
女騎士「す、すばらしい作品だと聞く! 私も見てみたいものだ!」

 

司祭補「精霊さまに願いが届くといいですわね」
女騎士「機会があればお前のことを取引先の一座の人に話しておこう」

 

そばかす娘「やったぁ! ありがとうございます!」

 

男の子「すごいや!」
女の子「よかったね!」

 

そばかす娘「うふふ、今のうちにサインしてあげる!」

 

女騎士「う……」
黒エルフ「あーあ、無責任なこと言っちゃって……」

 

司祭補「ところで、わたしたちは人を訪ねてこの村に来たのですけど……」
そばかす娘「やっぱり領主様に会いに来たの?」

 

黒エルフ「いいえ、グーテンベルクというドワーフの職工よ。知っているかしら?」

 

そばかす娘「もちろん! 怒ると怖いけど、根は優しい人だよ! ……だけど、もう日が傾いてきているし、今の時間からグーテンベルクさんに会いに行くのはやめたほうがいいと思う」

 

司祭補「あら、なぜかしら?」

 

そばかす娘「グーテンベルクさんの工房は、村の奥の古い坑道を抜けた先にあるの。坑道には夜になると恐ろしい怪物が出るんだよ」

 

女騎士「ふむ。どんな怪物か知らんが油断は大敵だな」
黒エルフ「あら? 猪突猛進のあんたにしては、いたく冷静なことを言うじゃない」

 

女騎士「正体の分からぬ敵ほど恐ろしいものはないぞ。とはいえ安心しろ。日ごろの鍛錬は欠かしていない!」

 

黒エルフ「って、やっぱり戦うつもりなのね……」

 

男の子「やめたほうがいいよ! 坑道の入り口には、怪物がいることを示す『呪いの文句』が書かれているんだ!」

 

女の子「坑道の中には危険な仕掛けがいっぱいで……子供は近づいちゃダメって言われているくらいなの!」

 

司祭補「あらあら、うふふ。ここは地元の方々のご忠告に従うべきかもしれませんわ」

 

女騎士「ううむ。それでは村で一泊して、明日の朝グーテンベルクさんの工房を訪ねるとするか」

 

黒エルフ「異存ないわ。もともと日帰りするつもりはなかったわけだし」

 

そばかす娘「だったら、ぜひ私の家に泊まっていってよ。何もないけど、寝床くらいは貸せるよ」

 

女騎士「おおっ、ありがたい!」

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女騎士、経理になる。 ①鋳造された自由

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原作:Rootport,イラスト:こちも

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