前回は、顧客接点の把握に役立つ「空間スケール」について解説しました。今回は、商圏分析でターゲットユーザを読み解くための「3つのステップ」を見ていきます。

地域を分類したデータと重ね合わせて分析

商圏範囲を考えるにあたっては使えるデータから定義するのがシンプルで分かりやすい。ビッグデータが取り扱えるようになり、IDPOSデータやポイントカード会員、クレジットカード会員のカードデータがあれば住所を基に分布図を作成し観察するのが一般的だ。しかし、分布からマーケティングに役立つ情報を読み取るもっとも効果的な方法は、ジオデモなど地域を分類したデータと重ね合わせて分析する方法だ。

 

下記図表は、名古屋市内のエムアイカードユーザ世帯をジオデモ別に集計してその構成比率を比較したものだ。

 

【図表】エムアイカードの名古屋市内のカードユーザ分布

(資料提供 エムアイカードより)
(資料提供 エムアイカードより)

 

この表を読み解くことによって、自社にとって注目すべき顧客がだれであるかを理解することができる。読み解くときのステップは(1)市場規模、(2)既存顧客の特徴、(3)市場規模と特徴から今後の方向性を決めるといういたってシンプルな手順となる。

 

(1)市場規模はこの場合、名古屋市全体の世帯数、約100万世帯が総市場規模となる。(2)既存顧客の特徴はエムアイカードユーザの世帯%とINDEXに注目することによって明らかになる。この表に使用されているのは実際のエムアイカードから算出した構成比率だが実数は伏せてある。

 

仮にエムアイカードユーザが名古屋市内にはおよそ10万世帯いるとすると「1.都心富裕層地区」にはその8.1%、8100人のユーザがいることになる。名古屋市では「1.都心富裕層地区」の世帯の構成比率は5.7%であるのに対して、エムアイカードユーザは8.1%。名古屋市の構成比率5.7%でエムアイカードユーザの構成比率8.1%を割って100をかけた数値がINDEXとして表示されている。INDEX142ということは、エムアイカードユーザはこの「1.都心富裕層地区」に1.42倍の割合で多くいるという意味だ。「2.市街地富裕層ファミリー地区」(164)、「4.ホワイトカラーファミリー地区」(111)といった地区に多いことがわかる。

ターゲットユーザで変わる「選択すべき戦略」

(1)市場規模の把握、(2)既存顧客の特徴がわかったところ今後の施策にどう生かすか? 今後の施策を考える上で「だれ」をターゲットとするかで、選択すべき戦略が変わる。

 

ここでは2つのシナリオが検討できる。1つは、既存顧客と類似の人をターゲットとするシナリオだ。もう1つは、これまであまり取り込むことのできなかった人をターゲットとするものである。

 

エムアイカードのターゲットユーザは(2)既存顧客の特徴から都市部の富裕層である。販売促進をどこに集中するかといえば、「1.都心富裕層地区」、「2.市街地富裕層ファミリー地区」の居住者と接触しやすい公共交通機関、電車などの車内広告の強化というシナリオを考えることができるかもしれない。100万世帯に対して10万世帯、10%のシェアを持つカードなので、より既存顧客と類似する顧客を取り込む戦略を選択することもできれば、反対にシェアの低い、言い換えるとINDEX値の低いグループを攻めるという選択もある。

 

「3.シングル.カップル地区」はINDEX99で平均的な反応しかない。しかし、名古屋市では27%を構成するボリュームゾーンでもある。このボリュームゾーンを積極的に攻めるという考え方もある。このグループ3地区の居住者は若いという特徴があるのでエムアイカードのイメージをもう少し若者向けにアレンジし、若い世代に訴求する媒体に露出していくといった戦略を検討することもできるかもしれない。

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

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酒井 嘉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

「ところ変われば、(売れる)品も変わる」──。現代において「流行」とは、企業がつくり出すものではない。様々な情報へ日常的に触れる消費者に「選ばれて」初めて、流行の商品・サービスとして流通する。ビッグデータ全盛の…

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