「これが人生最後の贅沢…」〈年金11万円・貯金300万〉66歳おひとりさま女性に舞い込んだ“親の遺産”

独身のミサエさん(仮名・66歳)は、都内郊外にある家賃7万円の築古アパートで暮らしています。

非正規雇用の期間が長かったミサエさんの年金は月約11万円。それだけでは生活費を賄えず、約300万円の貯金を切り崩しながら、老後不安を抱えて節約生活を送っていました。

そんなミサエさんのもとに、ある日突然、思いがけない知らせが届きました。親が亡くなり、遺産として2,000万円を相続することになったのです。親の遺産を合わせると、ミサエさんの資産は2,300万円に増えました。

これまでお金の心配から我慢を重ねてきたミサエさんは、まとまった遺産を前に「これが人生最後の贅沢だから……。元気に動けるうちに、思い切ったことをしてみたい」と、気が大きくなりました。

そこで目に留まったのが、豪華客船で巡る40日間のクルーズ旅行でした。寄港地を訪れながら、船内では食事やショーを楽しめる長期の船旅で、費用は中程度のカテゴリーの部屋で約600万円かかります。

年金生活を送るミサエさんにとって、今まで考えたこともないほどの大きな金額でした。それでも、これまで旅行などの楽しみを諦めてきた年月を思うと、今こそ自分のためにお金を使いたいと考えたのです。

クルーズ旅行を満喫も、年金生活に起きた〈異変〉

実際に参加したクルーズ旅行は、ミサエさんにとって生涯忘れられない40日間となりました。船内では豪華な食事やイベントを楽しみ、寄港地では美しい景色やさまざまな異国の文化に触れる。まさに非日常の連続だったといいます。

長年、生活費や老後資金を気にして、娯楽は後回しにしてきたミサエさん。600万円という出費を引き換えに、夢のようなひとときを過ごし、後悔はありませんでした。

しかし、クルーズ旅行を終えると、ミサエさんの生活に異変が起こります。

船内で提供されるサービスや、連日のおいしい食事に慣れきってしまったミサエさんは、帰国後もその豪華な旅行気分がなかなか抜けませんでした。「たまにはいいわよね」と、以前なら絶対に買わなかった少し高価な惣菜やスイーツを日常的に買うようになり、金銭感覚が狂ってしまったといいます。

当然、口座の残高が減るペースは以前にも増して加速していきました。クルーズ旅行の費用600万円を差し引いたミサエさんの資産は残り1,700万円程度。旅行前は家賃を含めて月16万円程度に収まっていた生活費も、気がつけば毎月大幅にオーバーするようになっていました。

総務省の『令和7年家計調査報告』(※)によると、65歳以上の単身無職世帯における家計支出の平均は、消費支出(いわゆる生活費)が約14万8,000円、非消費支出(税金や社会保険料)が約1万3,000円となっています。

この調査は持ち家を前提としているので、家賃も含めた支出と考えると、ミサエさんは節約しながら生活しているといえます。しかし、ミサエさんの年金は、月11万円。節約していたとしても、毎月約5万円の赤字が出ます。

ただし、これはあくまで生活費ベースの話であり、これに加え、医療費や介護費がかかってくる可能性は免れません。