悔やまれる「時間の使い方」

「なんのために無理をして働き続けてきたのだろうか。妻がこんなに早く亡くなってしまうのであれば、年金を繰り下げずに65歳から受け取り、もっと早く仕事をセーブしていればよかった。そうすれば、妻の身体の異変にも早く気づけたかもしれないし、2人で小旅行を楽しむ時間くらいは作れたのではないか……。もし、妻の寿命がわかっていたらなあ……」

Aさんは「年金を繰り下げたせいでこんな目に遭ってしまった」と後悔を口にします。

老後の経済的なゆとりを目指して増額を狙うのか、あるいは、早めに受け取って家族との時間や健康を優先するのか。Aさんの悔いは、数字の損得だけでは測れない、多様化した年金受給方法の「選択の難しさ」を浮き彫りにしています。

公的年金を「働けなくなった高齢期の保険」と捉えれば、繰下げによる増額は安心できる判断といえるでしょう。一方で、早めに受け取って元気なうちに時間を有効に使いたいという考え方も、決して間違いではありません。人生100時代といいつつも、一人ひとりの寿命まではわからないからです。現実的にライフプランを考える上で想定外の寿命を考えることは難しいもの。

年金はどのタイミングで受け取るのが最適なのか。実際に、その人が「後悔しない受け取り方」は、人生が終わらないとわからないのかもしれません。だからこそ、受給時期を検討する際は「受給額の最大化」だけに目を奪われるのではなく、日ごろから健康寿命を延ばすことを念頭に、「その年齢でなにをして過ごしたいのか」という時間的な価値も含めて総合的に判断する必要があります。

三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表

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