今さら文句を言っても遅い!…6,000万円の財産隠しがバレて、開き直る「泥沼相続」に発展

しかし数ヵ月後、実家に立ち寄ったジロウさんは、大手証券会社や銀行からの分厚い運用報告書を偶然発見します。

中身を確認すると、父の名義で約6,000万円にのぼる預貯金と株式が残されていることが記されていました。

「兄貴、どういうことだ! 父さんの遺産は実家だけって言ったじゃないか!」

ジロウさんが証拠を突きつけると、タロウさんの顔は真っ青になっていました。タロウさんは、父の遺産の存在を隠し、自分だけで独り占めしようと企んでいたのです。

「もう協議書にハンコを押したんだから、今さら文句を言っても遅いぞ!」とタロウさんは開き直りました。

しかし、ジロウさんのように「遺産はこれしかない」と騙されて合意してしまった場合、法律上の「錯誤(重大な勘違い)」や「詐欺」にあたり、協議そのものの無効を主張することが可能です。

タロウさんの悪質な財産隠しは、当然許されません。協議はやり直しとなり、タロウさんは兄弟の信頼を完全に失いました。

このように、一部の相続人による財産隠しがあとから発覚した場合、すでにハンコを押してしまった遺産分割協議書は法的にどう扱われるのでしょうか。

【弁護士が解説】ハンコを押した遺産分割協議書は覆せるのか

遺産分割では、事前にどのような説明を受けていたかも重要ですが、最終的に非常に重い意味を持つのは、署名・押印した「遺産分割協議書」の記載内容です。

本件では、兄のタロウさんから「預貯金はほとんど残っていない」と説明されていた一方、実際の協議書には預貯金や証券口座が遺産として記載され、それらを兄が取得する内容となっていました。

兄が意図的に虚偽の説明をしていたのであれば、詐欺や錯誤による取り消しを検討する余地はあります。

もっとも、一度署名・実印による押印までした書面について、「内容をよく読んでいなかった」「兄の説明を信用していた」というだけで、簡単に覆せるわけではありません。むしろ、書面には明確に記載されていたという事情は、不利に働く可能性があります。

遺産分割協議書は、一度成立すると相続人間の権利関係を大きく左右します。家族から渡された書類であっても安易に署名せず、財産の内容や取得者について疑問があれば、押印する前に資料を確認し、必要に応じて専門家へ相談することが重要です。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

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