「学童に入れなかった子どもの面倒を見てほしい」――共働きの娘からの切実な声に、坂本さん(仮名・67歳)は、最終的に長年続けたパートを辞める決断をしました。しかし、「家族のため」と納得したはずが、退職してしばらくすると、「私、もう一度働きたい」という気持ちが芽生えます。仕事を辞めたことで初めて気づいた、収入だけではない「働くことの価値」と、家族を大切にしながら自分の人生も大切にするための選択とは? CFPの伊藤寛子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「孫のために辞めました。でもね…」年金月25万円の67歳女性、〈学童落ちた〉娘のSOSに仕事を手放したが、「こんなはずじゃなかった」と嘆くワケ【CFPの助言】
「家族の誰か1人が担う」が正解とは限らない
その後、信子さんは娘に自分の気持ちを話しました。
「楓のことは大切だし、これからもできる範囲で力になりたい。でも、やっぱり仕事をしたいと思っているの」
信子さんの話を聞き、娘は反省した面持ちでこう詫びてきました。
「お母さんにはお母さんの人生があるのに、甘えすぎていたよね……」
「母も喜んで孫を見てくれている」「身内で助け合えば外部にお金を払わずに済む」という気持ちで、最初から信子さんをアテにしてしまっていたことに、娘も気づいたのです。
そこから2人は、今後の孫のサポートについて改めて考えました。
信子さんは新しい職場を見つけ、週数日働きながら、できる範囲で孫をサポート。必要に応じてファミリーサポートや送迎サービスなどの、外部サービスを利用することにしました。
もちろん、外部サービスを利用すればお金はかかります。しかし、その費用によって信子さんが仕事を続けられるのであれば、それは「必要な出費」です。
そもそも子育ての主体は親自身であり、祖父母の協力はあくまで「補佐」です。最初から身内の労働力を無償のあてにするのではなく、お金を使って外部の手を借りることで、特定の誰かに負担が偏るのを防ぐことができます。
前進し始めた家族ですが、信子さんに後悔がないわけではありません。
「元の職場には戻れず、時給も下がりました。最初から“働く場所を失うこと”を真剣に考えておけばよかった。安易に仕事を辞めるんじゃなかったな……そう思います」