「家族の誰か1人が担う」が正解とは限らない

その後、信子さんは娘に自分の気持ちを話しました。

「楓のことは大切だし、これからもできる範囲で力になりたい。でも、やっぱり仕事をしたいと思っているの」

信子さんの話を聞き、娘は反省した面持ちでこう詫びてきました。

「お母さんにはお母さんの人生があるのに、甘えすぎていたよね……」

「母も喜んで孫を見てくれている」「身内で助け合えば外部にお金を払わずに済む」という気持ちで、最初から信子さんをアテにしてしまっていたことに、娘も気づいたのです。

そこから2人は、今後の孫のサポートについて改めて考えました。

信子さんは新しい職場を見つけ、週数日働きながら、できる範囲で孫をサポート。必要に応じてファミリーサポートや送迎サービスなどの、外部サービスを利用することにしました。

もちろん、外部サービスを利用すればお金はかかります。しかし、その費用によって信子さんが仕事を続けられるのであれば、それは「必要な出費」です。

そもそも子育ての主体は親自身であり、祖父母の協力はあくまで「補佐」です。最初から身内の労働力を無償のあてにするのではなく、お金を使って外部の手を借りることで、特定の誰かに負担が偏るのを防ぐことができます。

前進し始めた家族ですが、信子さんに後悔がないわけではありません。

「元の職場には戻れず、時給も下がりました。最初から“働く場所を失うこと”を真剣に考えておけばよかった。安易に仕事を辞めるんじゃなかったな……そう思います」