「終身」と謳う老人ホームだからといって、どのような状態になっても最期まで同じ施設で暮らせるとは限りません。本記事では、入居したわずか数ヵ月後、母親の認知症が急激に進行して「当施設ではこれ以上対応できません」と退去を求められた家族の事例をもとに、老人ホーム選びで見落としやすい「終身契約」の注意点について、元介護施設職員でFPの武田拓也氏が解説します。
施設長「申し訳ないのですが…」年金月15万円・78歳母を入れた「終身契約」の老人ホーム。入居から3ヵ月で〈まさかの退去宣告〉に54歳娘が絶望【元介護施設職員のFPが解説】
「認知症対応」を鵜呑みにしない…老人ホーム入居前に確認すべき「8つのポイント」
老人ホームを探す際に多くの家族が確認するのは、「月額はいくらか」「食事はおいしいか」「部屋はきれいか」「駅から近いか」などでしょう。もちろん、これらも重要なポイントです。
しかし長期間暮らすことを考えるなら、それ以上に確認しておきたいのが「どんな状態になると住み続けられなくなるのか」という点です。
特に入居前には少なくとも次の点を確認しておきましょう。
・認知症が進行しても入居を継続できるか
・徘徊や夜間せん妄が出た場合はどうなるか
・暴言・暴力・他害行為が出た場合はどうなるか
・要介護度が上がっても対応してもらえるのか
・たん吸引や経管栄養など医療的ケアが必要になった場合はどうなるか
・入院が長期化した場合、居室を維持できるか
・施設側から契約解除できる具体的条件は何か
・退去時の前払金の返還方法はどうなっているか
「大丈夫です」「認知症にも対応しています」という担当者の言葉だけで判断せず、重要事項説明書と入居契約書で確認することが大切です。
老人ホーム選びで後悔しないために…必要な“5年後、10年後”の視点
ミキさんは、「終身」という言葉を「母が亡くなるまで面倒を見てもらえる」という意味だと受け取っていました。しかし老人ホームは医療機関ではありません。
人員配置も設備も医療連携体制も、施設ごとに異なります。認知症に対応している施設であっても、症状の程度によっては対応できなくなる可能性があります。
だからこそ、老人ホーム選びでは「今の親が入れる施設」ではなく、「5年後、10年後に状態が悪化しても暮らせる施設なのか」という視点が必要です。
そして、もう一つ大切なのがお金です。年金15万円に対して施設費22万円なら毎月7万円の赤字です。年間では84万円。5年間続けば420万円になります。ここに医療費や介護用品代、施設の追加サービス費などが加わります。
老人ホーム選びは、単なる「介護施設探し」ではありません。介護状態の悪化、施設からの退去、長期入院、資金不足まで想定した長期的なライフプランとして考える必要があります。
後悔しないためにも、事前の情報収集をしっかりと行いましょう。
武田 拓也
元介護施設職員/FP
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