配偶者や子どものいない「おひとり様」の相続では、しばしば「見知らぬ相続人の存在」がトラブルの火種になります。叔父の相続に立ち会ったケイスケさん(仮名・45歳)も、まったく交流のない〈顔も名前も知らない相続人〉の存在に頭を抱えました。弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、「おひとり様」の相続で注意すべきポイントについて解説します。
「いったい誰なんだ…」孤独死した72歳叔父の〈遺産3,000万円〉をめぐり45歳甥が絶句。突如浮上した、顔も名前も知らない〈まさかの相続人〉【弁護士が解説】
北海道に住む“見知らぬ”従兄弟との「遺産分割協議」の行方
「まさか祖父に隠し子がいたとは……。しかも、その子どもたちと叔父の遺産の話し合いをしなきゃいけないなんて」
ケイスケさんは思わず頭を抱えました。預金を解約するためには、北海道に住む彼らに連絡を取り、遺産分割協議を行って実印と印鑑証明書をもらわなければなりません。
ケイスケさんは意を決して、司法書士の協力を得ながら、北海道に住む従兄弟たち宛てに手紙を送りました。叔父が亡くなったこと、生前の様子、そして預金の手続きのために協力してほしいという事情を丁寧に綴りました。
数週間後、相手方から電話がありました。
「突然の手紙で驚きましたが、事情はわかりました。私たちはそちらの家系とは一切関わりを持たずに生きてきましたので、遺産を主張するつもりはありません。手続きには協力します」
幸いにも相手が事情を理解してくれたため、叔父の預貯金はすべてケイスケさんが相続するという形で合意が成立し、無事に手続きを終えることができました。もし彼らが「法定相続分を要求する」と主張していれば、ケイスケさんは家庭裁判所に調停を申し立て、遠方での争いに巻き込まれるという多大な負担を強いられていたことでしょう。
配偶者や子どものいない「おひとり様」ほど、自身の死後に生じるのこされた親族の苦労を想像しにくい傾向にあります。元気なうちに「遺言書」をたった一通残しておくことが、のこされた身内の負担を大きく減らすことにつながります。
【弁護士が解説】半血の兄弟姉妹も相続人…「おひとり様」の相続の注意点
配偶者や子、直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。もしすでに亡くなっていれば、その子である甥・姪が代襲相続します。こうしたケースで特に注意したいのが、父母の一方だけを同じくする「半血の兄弟姉妹」も相続人になる点です。
本件では、祖父(叔父の父)が別の女性との子を認知していたため、祖父とその子の間に法律上の親子関係が成立しています。その子は、叔父と父親は同じでも母親が異なるため、叔父にとって半血の兄弟姉妹に該当します。
つまり、日頃まったく交流がなく、親族として認識していなかったとしても、戸籍上は相続権を有します。ただし、半血の兄弟姉妹の法定相続分は、父母双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1に調整されています。
また、現在より一、二世代前では親族関係が濃く、婚外子が認知されていたり、血縁のない人が養子縁組によって戸籍に入っていたりするケースも、戸籍調査でたびたび遭遇します。
本件では相手方が協力的だったため円滑に進みましたが、連絡が取れない、相続分を主張されるといった場合には、手続きが長期化しかねません。
「おひとり様」の場合は、可能な限り自分の推定相続人を戸籍で確認し、財産を渡したい相手がいるのであれば遺言書を作成し、遺言執行者も指定しておくことが重要といえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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