民間の老人ホームと比べ、費用負担が抑えられる特別養護老人ホーム・通称「特養」。入所の優先順位はさまざまな条件・要素から総合的に判断されますが、入所後に施設から突然「退去勧告」を受けるケースもあります。本記事では実際の事例をもとに、「特養」を利用するうえで知っておきたい注意点やポイントを、元介護施設職員でFPの武田拓也氏が解説します。
年金月11万円・78歳父、1年半待ちで「特養」入所→わずか3ヵ月で退去勧告。安心しきった52歳娘が施設長から告げられた〈まさかのひと言〉【元介護施設職員のFPが解説】
「要介護2になったので…」入所3ヵ月で突きつけられた“退去勧告”に絶句
特養へ入所したタカノリさんは、規則正しい生活を送るようになりました。施設内では食事や睡眠の時間が整い、職員の見守りのもとで日常動作の練習も行われました。
自宅では転倒を恐れて動く機会が減っていましたが、施設では職員の見守りのもと、安心して身体を動かせるため少しずつ足腰の状態が改善していきます。
入所から3ヵ月ほど経過したころ、要介護認定の見直しが行われました。結果は要介護3から要介護2への改善でした。本来であれば状態が良くなったことは喜ばしいことです。
ところが、その結果を伝えた施設長からエミさんは予想外の説明を受けます。
「こちらの施設は原則として要介護3以上の方を対象とする施設です。要介護2になったため、入所継続の必要性を改めて検討することになります」
エミさんには「要介護2になったので退所を検討してほしい」という通告に聞こえました。長い待機期間を経て、ようやく見つけた父親の安住の地。それを失うかもしれない現実にエミさんは言葉を失いました。
【元介護施設職員のFPが解説】要介護度が改善したら即退所?「特養」の注意点
要介護度が3から2になっただけで、すぐに特養を退所しなければならないわけではありません。
要介護2になっても自宅で日常生活を送ることが困難なやむを得ない事情があれば、特例的に入所が認められます。エミさんのようなケースでは施設から退所の話をされたとしても、その場ですぐに了承する必要はありません。
まず確認すべきなのは「正式な退所決定」なのか、それとも「入所継続についての再検討」なのかという点です。
口頭で「要介護2になったので退所です」と言われた場合には、判断の根拠や今後の手続きを確認しましょう。そのうえで施設の生活相談員、ケアマネジャー、市区町村の介護保険担当窓口、地域包括支援センターなどに相談します。
自宅での介護が困難である事情については、できるだけ具体的に伝えることが重要です。
例えば「仕事を辞めなければ介護できない」「夜間の転倒リスクがある」「一人になる時間が長い」「自宅に段差が多い」といった状況です。要介護度が軽くなったことと、自宅で安全に暮らせることは同じではありません。
年金が月11万円しかない場合、施設の選択肢は限られるでしょう。介護施設の費用負担を軽減する制度には、介護保険施設の居住費などを軽減する「負担限度額認定」があります。所得や預貯金などの要件を満たせば、居住費などが軽減されます。
制度を知らないまま「年金だけでは施設に入れない」と判断せず、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。
武田 拓也
元介護施設職員/FP
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