どちらを優先するかは人それぞれ、万人向けの正解はない

iDeCoの制度改正を控え、特に定年が視野に入ってくる40代後半以降にとっては「iDeCoが主役、NISAはサブ」という考え方も人によっては現実的になり得るでしょう。ただし、iDeCoには独自の注意点もあります。

それは、出口でかかる「税金」です。iDeCoは受け取るときに課税されます。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」という大きな非課税枠を使えますが、会社の退職金と同じ時期に受け取ると、この枠を分け合うことになります。しかも2026年1月からは、受取時期をずらして枠を二重に使う条件が「5年→10年」へ厳しくなりました(注3)。退職金の多い人は、受け取り方の設計が必要です。

たとえば、退職所得控除の枠に収まる分は一時金で、収まらない分は年金形式で受け取り、「公的年金等控除」というもう一つの非課税枠を併用するのも一つの手。特に公的年金を受け取り始める前なら、この枠をiDeCoの年金にまるごと使えます。

また、枠がいくら広がっても「60歳まで引き出せない」というデメリットは変わりませんし、途中で積み立てを休止しても手数料だけは引かれ続けます。

一般的にはiDeCoのメリットをより活かせるのは、自営業や会社員でも退職金や企業年金の薄い人などです。2つの制度は併用できるので、住宅購入や教育費など、60歳より前に使う可能性がある資金はいつでも引き出せる新NISAを優先するなど、バランスを考えながら両方を使うのもよいでしょう。

そもそも、NISAの生涯枠1,800万円とiDeCoの枠を両方埋められる人は、ごく少数派です。投資は枠を埋めるゲームではありません。どちらも、生活を圧迫しない「できる範囲」で使ってこそ。自分の年齢・年収・目的から優先順位を考えることが、いちばんの「得」なのかもしれません。
 

(注1)企業年金のない会社員のiDeCo掛金上限は月2万3,000円(年27万6,000円)。

(注2)iDeCoの拠出限度額の引上げは2026年12月施行(掛金への反映は2027年1月引き落とし分から)。企業年金のない会社員は月2万3,000円→月6万2,000円に。企業年金がある場合は、企業年金の掛金と合算して月6万2,000円まで(厚生労働省「私的年金制度、iDeCoの改正のポイント」)。

(注3)退職所得控除の重複調整ルール:iDeCoの一時金を先、退職金を後に受け取る場合、従来は5年以上空ければ重複調整が働かず、iDeCoと退職金がそれぞれの退職所得控除を互いに削り合わずに使えたが、2026年1月からは10年(前年以前9年内が調整対象)に延長。退職金を先に受け取る場合は「前年以前19年内(20年ルール)」が対象で変わらない(国税庁 No.2735)。

※本文中の試算は特定の条件下での概算シミュレーションによるもので、将来の運用成果を保証するものではありません。また、特定の制度や商品の利用を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行なってください。

青山創星
ファイナンシャル・プランナー

【注目のセミナー情報】
【アメリカ不動産投資】7月27日(月)オンライン開催

過去10年間で住宅価格が1.9倍に上昇したエリアも!
「減価償却×ドル建て資産」を活用した資産形成戦略

【不動産投資とは異なる選択肢】7月28日(火)オンライン開催
《収益性×土地活用×減価償却》
節税込利回り16%超も狙える「トレーラーハウス投資」の全貌