親が高齢になるにつれ、子どもにとって避けて通れない課題となるのが親の“終の棲家”です。「老人ホーム」とひと口にいっても、近年はサービス内容やかかる費用が多様化し、どこを選べばいいのか迷ってしまう人も多いでしょう。しかし、外観の美しさやパンフレットの甘い言葉だけで施設を選んでしまうと、入居後に取り返しのつかない事態に陥ることも……。80代の母親と50代の娘の事例を通して、後悔しない「老人ホーム」選びのポイントについて、介護施設で勤務していたFPの武田拓也氏が解説します。
「知らない人が…」年金12万円・82歳母からのSOS。56歳娘が高級老人ホームで目撃した〈衝撃の光景〉【元介護施設勤務のFPが解説】
母親からのSOS…急いで駆けつけた娘が目にした“衝撃の光景”
「知らない人が勝手に部屋に入ってくるの。怖くてたまらない」
ある日、母親から震える声で1本の電話が入りました。あわてて施設へ駆けつけたカナさんは、目を疑う光景を目撃します。
「……なにやってるんですか!?」
なんと、母親の居室でクローゼットを勝手に開け、衣類を物色している見知らぬ高齢の女性の姿が。声をかけて退室を促しても、言われていることが理解できないのか、女性はきょとんとした表情のままです。
サトコさんに話を聞くと、数日前には別の入居者が母親のベッドで勝手に眠っていることもあったそうです。実は、これらの迷惑行為の犯人は最近入居してきた認知症を患う入居者でした。
怒りに震えるカナさんは、すぐさま施設長に猛抗議を入れました。
「高い費用を払っているのに、どうしてこんなことが起きるんですか?」
すると、施設長は申し訳なさそうに言いました。
「本当に申し訳ありません。ここ1年で入居者が増えて満床になったのですが、その分業務負担が増え、スタッフの離職が続いてしまって……。募集はかけているのですが人手が足りず、見守り体制が追いついていない状況で」
サトコさんが入居したころはオープンしたばかりで入居者も少なく、スタッフの目も一人ひとりに行き届いていました。しかし、満床になったとたん現場はパンク。
さらに、「身体拘束」などの観点から居室は内側からしか施錠できないようになっていますが、地方の実家暮らしが長かったサトコさんには施錠の習慣がなく、結果として認知症の入居者が簡単に入れる状況になっていたのです。
「安全と安心を買ったつもりだったのに……これでは自宅にいたほうがまだマシだ」と、カナさんは自分の選択を激しく後悔しました。
