相続トラブルというと、多額の遺産をめぐる“一部の富裕層の問題”と思われがちですが、実際にはそうではありません。家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の約8割は、「遺産総額5,000万円以下」の家庭で起きています。トラブルの原因はさまざまですが、特に「介護をしたかどうか」、「長男の嫁という立場」は、典型的に揉めやすいポイントです。今回は、65歳夫婦と58歳の義妹の事例をもとに、相続トラブルが起きる背景と、その予防策についてFPが解説します。
「下の世話までしたのよ!?」通夜の席に響いた65歳・長男の妻の怒号。義父の介護を一切しなかった58歳義妹と〈遺産3,000万円〉の相続で大喧嘩【元社会福祉士FPが警告】
「下の世話までしたのよ!?」年金18万円・65歳長男夫婦、貯金を崩して義父を介護
「夜もろくに眠れずお義父さんの下の世話までして、自分たちの貯金を切り崩して介護したのよ!? それなのに、よくそんな厚かましいことが言えるわね!」
通夜と葬儀を終えた会食の席。ようやく一息ついたはずが、和やかな空気を切り裂いたのは、普段は温厚な長男の妻・ミチコさん(仮名・65歳)の怒号でした。
ミチコさんと同い年の夫・タダシさん(仮名)は、夫婦あわせて月約18万円の年金生活を送っています。持ち家はなく、住まいは賃貸住宅です。老後資金として蓄えていた貯金はありましたが、決して十分とはいえません。
それでもこの3年間、要介護4となったタダシさんの父親の介護を、ほぼ2人だけで担ってきました。
要介護4ともなると、日常生活のほぼすべてに介助が必要で、24時間の見守りが欠かせません。しかし、父親は頑なに在宅介護を希望。介護にはお金がかかるため、夫婦はやむなく自分たちの貯金を切り崩しながら介護を続けてきました。
車で1時間ほどのところに住むタダシさんの妹・マユミさん(仮名・58歳)にも「少し介護を手伝ってほしい」と声をかけましたが、「色々と忙しい」と返事すらまともに返ってきませんでした。
「長男の嫁は口出さないで!」親族の目の前で勃発した58歳義妹との大喧嘩
そして、義父が亡くなり、会食の席。気まずさを抱えながら食事をし、話題は自然と遺産分割協議に移りました。すると、介護を一度も手伝わなかったマユミさんがこう言い放ったのです。
「お兄ちゃんたちはこのままお父さんの家(評価額1,500万円)をもらうんでしょ? だったら、残りの預貯金1,500万円は全部私がもらうわ。うちは息子の大学院の学費がかさんで、自分たちの老後資金が全然ないのよ」
マユミさんの一方的な主張に、ミチコさんは我慢の限界です。
「あんた、自分がなに言ってるかわかってるの? 私たちは貯金を切り崩してまで、お義父さんの介護したのよ!?」
「でも、『法定相続分』があるでしょう。半分は私がもらう権利があるわ。しかも、ミチコさんは『長男の嫁』でしょう。口を出せる立場なのかしら?」
こうして2人は、親族の目の前で激しい大喧嘩へと発展してしまいました。