老後の住まいは、多くの人にとって最大の資産である一方、大きな負担にもなり得ます。子どもが独立したり、夫婦のどちらかが亡くなったり離婚したりすると、かつて家族で暮らした家が「広すぎる家」へと変わることも少なくありません。とはいえ、売却や住み替えを考えても、長年住み慣れた家を手放す決断は容易ではないものです。71歳の元会社員男性もまた、誰も住まない部屋を抱えながら、一人で大きな家を守り続けていました。FPの小川洋平氏が“老後の家”で考えるべきポイントを詳しく解説します。
「もう、誰も来ないのに」…家族5人で暮らした庭付き一戸建てに“ぽつん”。年金月18万円・71歳元部長、空き部屋を持て余しながらも離れられない「切実な事情」【CFPが解説】
漠然とした不安を「具体的な課題」にする
佐藤さんの場合、年金収入が月18万円、金融資産は約1,000万円、自宅という資産もあります。ただ、毎月家計は赤字であり、単純計算で年間約72万円の赤字。1,000万円の貯蓄は約14年(85歳)で底をつきます。
ここに外壁塗装や屋根の修繕、自身の医療・介護費が入ると、70代後半〜80歳前後で破綻するリスクもあることがわかります。「なんとなく不安だ」と先送りしている間にも、貯蓄は確実に減り続けているのです。
仮に90歳、95歳まで生きるとしたら、現在の収入と支出で資産はどのように推移するのか。自宅を売却した場合、どれくらいの資金を老後の住まいに充てられるのか。こうしたお金の寿命を数字で「見える化」することで、漠然とした不安は「今、手を打つべき具体的な課題」へと変わります。
判断力や体力が低下してからでは、十分な準備ができず、選択肢そのものが狭まってしまいます。だからこそ、元気なうちから「これから先、どのように暮らしていくか」という視点で住まいを考えることが大切なのです。
老後の住まいは「いつか」ではなく「今」考える問題
老後の住まいの問題は、お金、健康、人間関係、介護、そして人生そのものに関わる問題です。佐藤さんのように「いつか考えよう」と思いながら先送りしている人は少なくありませんが、年齢を重ねるほど住み替えや住宅売却のハードルは高くなります。
大切なのは、まずは自分の現状を正しく把握することです。収入、支出、資産、そして住まいに掛かるコストを整理し、このまま暮らした場合の未来を数字で確認してみること。 その上で、「今の家で暮らし続ける」「住み替える」「高齢者住宅を検討する」など、自分に合った選択肢を考えていけば良いのです。
老後の不安は、見えないから大きくなります。まずは現状を「見える化」すること。それが、安心して老後を過ごすための第一歩です。
小川 洋平
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