高齢者の住み替えにはメリット・デメリット両方がある

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本全体の持ち家率は60.9%となっています。特に高齢者世帯は一戸建て住宅に住む割合が高く、過去の住宅・土地統計調査では高齢者のいる世帯の約8割が一戸建てに居住していました。

子育て時代に買った住宅が、高齢期には「広すぎる家」へと変わることも珍しくありません。持ち家は老後の安心材料になる一方、維持管理費や修繕費などの負担も抱えることにもなります。

佐藤さんの場合も、本来は家族5人で暮らすことを前提に建てた家。しかし、子どもが独立して妻と離婚した後、一人で暮らすには明らかに大きすぎました。広い家は光熱費も高くなりますし、固定資産税や修繕費も掛かります。さらに、高齢になるほど庭の手入れ、寒冷地では雪かきなどの維持管理も大きな負担になります。

この場合、売却してコンパクトな住宅へ住み替えたり、高齢者向け住宅へ移ったりすることで、生活コストを下げられるケースもあるでしょう。しかし、住み替えが必ずしも正解とは限りません。

長年暮らしてきた家や地域を離れることは、想像以上に大きなストレスになります。近所の人とのつながりや、かかりつけ医、日常の買い物環境など、長い年月をかけて築いてきた生活基盤を失うことになるからです。特に一人暮らしの高齢者にとっては、何気ない近所付き合いが見守りや助け合いにつながっていることも少なくありません。

そのため、大切なのは「今すぐ家を売るべきか」と考えるのではなく、まず自分の家計や資産状況を「見える化」してみることです。